第32回介護福祉士試験問題解説【問題087~96】 全10問 障害の理解

障害の理解

問題 87 
I C I D H (International Classification of Impairments, Disabilities and Handicaps : 国際障害分類)における能力障害としで適切なものを1つ選びなさい。

1 日常生活動作(Activities of Daily Living : A D L)の障害
2 運動麻痺
3 失語
4 職場復帰困難
5 経済的不利益

 

 

 

★問題87正解=1
◆◆解説◆◆

問題 87   正解は 1 といたします

むずかしいですね。

なかなか、つかみづらい学習内容のため、

後回しにしちゃった受験生さんも、多いかもしれません。

国際障害分類では、障害のレベルを

下記の、3つのカテゴリーに分類しています。

① 機能障害

② 能力障害

③ 社会的不利

『能力障害』とは

機能障害に起因する能力(人間として、正常とみなされる方法や

範囲で活動する能力)の、何らかの制限や欠如を意味します。

食事、排泄、衣服の着脱などの身辺動作や

コミュニケーションがうまくできない状態をいいます。

問題 88
「障害者差別解消法」に関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。

1 法の対象者は,身体障害者手帳を持っている人である。
2 合理的配慮とは,全ての障害者に同じ配慮をすることである。
3 共生社会の実現を目指している。
4 障害者は,合理的配慮の提供に努めなければならない。
5 障害者差別解消支援地域協議会は,民間事業者で組織される。

(注)「障害者差別解消法」とは,「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」
  のことである。

 

 

 

★問題88正解=3
◆◆解説◆◆

問題 88   正解は 3 といたします

『障害者差別解消法』の 第一条(目的)には

下記のようにあります。

この法律は、障害者基本法(昭和四十五年法律第八十四号)の基本的な

理念にのっとり、全ての障害者が、障害者でない者と等しく、基本的人権を

享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を

保障される権利を有することを踏まえ、障害を理由とする差別の解消の推進に

関する基本的な事項、行政機関等及び事業者における障害を理由とする

差別を解消するための措置等を定めることにより、障害を理由とする差別の

解消を推進し、もって全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられる

ことなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら、共生する社会の実現に

資することを目的とする。

ポイントは、『共生する社会の実現』です。

問題 89
痙直型や不随意運動型(アテト-ゼ型(athetosis))などの分類がある疾患として,正しいものを1つ選びなさい。

1 筋ジストロフィー(muscular dystrophy)
2 脊髄小脳変性症(spinocerebellar degeneration)
3 脳血管疾患(cerebrovascular disease)
4 脳性麻痺(cerebral palsy)
5 脊髄損傷(spinal cord injury)

 

 

 

★問題89正解=4
◆◆解説◆◆

問題 89   正解は 4 といたします

あわてて。

ミスした。

そんな受験生さん、おられませんか??

介護福祉士国家試験で、これまでに頻出されてきた疾患の

1つが、『筋ジストロフィー』。

ただし、近年では、『脳性麻痺』の類型を問う傾向に。

問題 90 
内因性精神障害に分類される疾患として,正しいものを1つ選びなさい。

1 脳腫瘍(brain tumor)
2 アルコール依存症(alcohol dependence)
3 パニック障害(panic disorder)
4 認知症(dementia)
5 統合失調症(schizophrenia)

 

 

 

★問題90正解=5
◆◆解説◆◆

問題 90   正解は 5 といたします

むずかしいですね。

問題90も、アンケートでは、難問ベスト10にランキング

していますので、多くの受験生さんが解答に迷ったものと

おもわれます。

精神障害は、

外因性・内因性・心因性の、3つに分類することができます。

『内因性精神障害』の原因には、

脳の神経伝達物質の分泌異常が起きている、

もしくは、遺伝的な要因が挙げられています。

しかし、他の2つの分類とは異なり、根本的な原因は未だに

分かっていないため、曖昧な部分も多く残されています。

主な病気としては、統合失調症や、躁うつ病などがあります。

問題 91 
Fさん(26歳)は重度の知的障害があり,施設入所支援を利用している。
次のうち, Fさんが地域移行するときの社会資源として,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 ケアハウス
2 共同生活援助(グループホーム)
3 自立支援医療
4 精神科病院
5 同行援護

 

 

 

★問題91正解=2
◆◆解説◆◆

問題 91   正解は 2 といたします

問題に登場する、共同生活援助(グループホーム)は、

介護保険制度における、認知症対応型共同生活介護とは

まったく、別物であることに、まず、注意が必要です。

では、Fさんが、

施設を退所して、地域移行を行なうことを支えて

くれる、共同生活援助とは??

共同生活援助(グループホーム)は、

障害のある人が、日常生活上の介護や支援を受けながら、

共同生活を営む、住居のことです。

グループホームで暮らす人に対し、入浴、食事などの介護や生活相談、

その他の、日常生活上の支援を提供するサービスは「共同生活援助」と

呼ばれ、障害者総合支援法が定める「障害福祉サービス」のひとつに

あたります。

ちなみに、設問1の、ケアハウスは、

ケアハウスとは、60歳以上の高齢者が、食事や洗濯などの

介護サービスを受けられる施設で、軽費老人ホームC型とも

呼ばれます。

助成制度が利用できるため、低所得者の費用負担が、比較的軽い

施設です。

 

問題 92 
自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder)の特性として,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 読み書きの障害
2 社会性の障害
3 注意の障害
4 行為障害
5 運動障害

 

 

 

★問題92正解=2
◆◆解説◆◆

問題 92   正解は 2 といたします

ここは、どなたもしっかり学習なさっておいでだと

おもいます。

社会的なコミュニケーションや、他の人とのやりとりが

上手く出来ないなどの、社会性の障害があげられます。

問題 93 
筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis : ALS)に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 免疫疾患である。
2 振戦や筋固縮か主な症状である。
3 視力や聴力は保たれる。
4 運動失調が現れる。
5 全身の臓器に炎症を起こす。

 

 

★問題93正解=3
◆◆解説◆◆

問題 93   正解は 3 といたします

絶望的な症状ばかり、思い浮かべてしまう受験生さんも、

多いとおもいますが、ALSでは、すべての機能を失う

わけではありません。

★ 眼の動きは、障害されないことが多いとされます。
 

ALSでは、

眼球の運動に必要な筋肉は侵されにくいので、

目の動きで自分の意思を伝えることができます。

声が出なくなり、手や指が動かなくなっても、

「瞬きワープロ」を使ってまぶたと眼球の

動きだけで意思表示し、原稿を書いている患者さんも

おられます。

★ 感覚障害はあらわれにくい とされます。
 

ALSでは、

視覚、聴覚、臭覚、味覚、触覚などの知覚神経は

侵されず、正常なまま維持されることが多いとされます。

患者さんたちは、この正常な機能を生かして、絵画鑑賞を

楽しんだり、音楽を聴いたりすることも可能です。

問題 94 
Gさん(56歳,男性)は,糖尿病性網膜症(diabetic retinopathy)に伴う眼底出血を繰り返して,治療を受けていた。医師から失明は避けられないと説明を受けた。その後, Gさんは周囲に怒りをぶつけたり,壁に頭を打ちつけたりという行動がみられるようになった。
このときのGさんの障害受容の状況として,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 ショックではあるが,・不安はそれほど強くない。
2 自分には障害はないと否認する。
3 前向きに自己努力を図ろうとする。
4 否認ができずに混乱する。
5 新しい価値観や役割を見いだす。

 

 

★問題94正解=4
◆◆解説◆◆

問題 94   正解は 4 といたします

障害の受容課程(プロセス)については、どなたも

学習なさったこととおもいます。

人は、障害が残ることになった時、まず衝撃に対して心理的に

緩衝しようとして、障害の否認を行います。

けれど、

『障害の否認』という段階が、維持できなくなると、

怒り、憤り、または恨みを周囲の人や、自分自身などあらゆる

方向に向けることになります。

周囲の人にとっては、非常に対応が困難な時期に至ります。

問題 95 
パーキンツン病(Parkinson disease)のHさんは,最近,立位時の前傾姿勢が強くなり。歩行時の方向転換が不安定になり始めた。日常生活動作には介助を必要としない。
Hさんのボーエン・ヤール重症度分類として,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 ステージⅠ
2 ステージⅡ
3 ステージⅢ
4 ステージⅣ
5 ステージV

 

 

★問題95正解=3
◆◆解説◆◆

問題 95   正解は 3 といたします

迷いに、迷って、得点できなかった・・・

こんな受験生さん、大多数とおもわれる難問でした。

『ホーエン・ヤールの臨床的重症度分類』という用語は

御存知でも、内訳の詳細はなかなか覚えられないもの。

この分類では、

ステージは、全部で、5つに大別されます。

ステージⅠ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ、Ⅴ ですね。

ふだん使わない表記なので、

これだけでもなんだか難しく感じますが、

中心となるのは、ステージⅢ。

【ステージⅡ】が、

両側、または、身体中心部の障害で、

ただし、身体のバランスの障害を伴わない

ことに対し、

【ステージⅢ】では、

姿勢反射障害の、初期徴候が見られるとされます。

これは、患者さんが、歩行時に向きを変えるときの、

不安定さなどが明瞭になります。

ただし、

職種によっては、仕事も可能であり、

身体的には、独立した生活をつづけることもできる

とされます。

機能障害度は、軽度、ないし、中程度となります。

 

 

問題 96 
制度化された地域の社会資源として,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 家族会が行う悩み相談
2 近隣の住民からの善意の声かけ
3 同居家族が行う身の回りの介護
4 コンビニエンスストアによる見守り
5 民生委員が行う相談・援助

 

 

 

★問題96正解=5
◆◆解説◆◆

問題 96   正解は 5 といたします

制度化・・・という箇所が、決め手ですね。

民生委員さんは、『民生委員法』に則り、活動を

なさいます。

民生委員は、厚生労働大臣から委嘱され、それぞれの

地域において、

常に住民の立場に立って相談に応じ、必要な援助を行い、

社会福祉の増進に努める方々であり、「児童委員」を

兼ねています。

実家の、お父様や、お母様が、実は民生委員!

なんて受験生さんも、おいでかもしれませんね。

 

 

 

第32回介護福祉士国家試験 試験問題と解答解説  目次

解答速報一覧はこちらから

問題難易度アンケート

得点状況アンケート

・【問題001~2】 全2問 人間の尊厳と自立

・【問題003~4】 全2問 人間関係とコミュニケーション

・【問題005~16】 全12問 社会の理解

・【問題017~26】 全10問 介護の基本

・【問題027~34】 全8問 コミュニケーション技術

・【問題035~60】 全26問 生活支援技術

・【問題061~68】 全8問 介護過程

・【問題069~76】 全8問 発達と老化の理解

・【問題077~86】 全10問 認知症の理解

・【問題087~96】 全10問 障害の理解

・【問題97~108】全12問 こころとからだのしくみ

・【問題109~113】全5問 医療的ケア

・【問題114~125】全12問総合問題

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