第32回介護福祉士試験問題解説【問題61~68】 全8問 介護過程
介護過程
問題 61
介護過程の目的に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 利用者の価値観を変える。
2 利用者の療養上の世話をする。
3 利用者の経済的負担を軽減する。
4 利用者の望んでいるよりよい生活を実現する。
5 利用者の生活習慣を改善する。
★問題61正解=4
◆◆解説◆◆
【介護過程】の教科書的な定義は、
『利用者の介護生活における解決すべき課題(生活課題〔ニーズ〕)を
見極め、解決するための計画を作り、実施し、評価する一連のプロセスをいい、
介護の目的を実現するための、
客観的で、科学的な思考と実践の過程のことである。』となります。
問題 62
介護計画の作成に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 抽出されたニーズを踏まえて目標を設定する。
2 内容が明確であれば支援方法の記載は省略する。
3 支援方法は「~させる」と使役文で記載する。
4 利用者の正しい理解を促すために専門用語を用いる。
5 計画の見直しの時期は決めない。
★問題62正解=1
◆◆解説◆◆
ニーズとは、
生活全般における解決すべき課題・・・と
とらえると、わかりやすいですね。
介護計画の書式や、記入例などもネット上に、たくさん事例が
でています。
良い例を、たくさん読んで、
パターンをつかめば、用紙を前に、悩むことも少なく
なりそうです。
問題 63
介護計画の実施に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 介護福祉職の価値観に沿って実施する。
2 実施した状況は客観的に記録する。
3 計画の内容は実施の直前に家族に伝える。
4 他職種への経過報告は目標の達成後に行う。
5 利用者の満足度よりも目標の達成を優先する。
★問題63正解=2
◆◆解説◆◆
問題 63 正解は 2 といたします
解説不要ですよね!!
次の事例を読んで,問題64,問題65について答えなさい。
〔事 例〕
Cさん(75歳,男性,要介護1)は,脳梗塞(cerebral infarction)を発症した。2か月前から在宅復帰を目的として介護老人保健施設に入所している。次女は遠方から時々面会に来ているが,長女とは音信不通の状態が続いている。
Cさんは現在,右片麻痺で歩行には杖を使用している。担当の理学療法士から,「レクリエーションには積極的に参加するなど意欲はあるが,歩行状態が思うように改善しないと悩んでいた」との報告があった。
その後,歩行訓練やレクリエーションに参加しなくなり,居室のベッドで寝て過ごすことが多くなった。また,時々尿失禁をするようになった。
Cさんは,「自宅に帰りたいのに,このまま車いすになったらどうしよう」と担当の介護福祉職に打ち明けた。
問題 64
Cさんの介護過程の展開に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 長女から入所前の情報を収集する。
2 現状を再アセスメントし,生活課題を抽出する。
3 自宅に戻った後の介護計画を立案する。
4 尿失禁に対応する介護計画の実施を優先する。
5 介護計画の最終的な評価は理学療法士が担当する。
★問題64正解=2
◆◆解説◆◆
Cさんは、
『介護保険施設』の1つに位置づけられる、
介護老人保健施設に入所中との設定です。
施設入所にあたり、老健では、施設サービス計画を
作成することが義務付けられています。
この計画に沿って、施設サービスが提供されるのですね。
Cさんの現状が、
入所当時に比べ、大きく変化していることから、
再アセスメント後、新たな生活課題を抽出することが
必須とかんがえられます。
問題 65
次の記述のうち, Cさんの短期目標として,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 車いすの使用方法を理解する。
2 居室のベッドで安静に過ごす。
3 次女との同居を実現する。
4 今まで以上に,意欲的に歩行訓練に取り組む。
5 居室を出てレクリエーションに参加する。
★問題65正解=5
◆◆解説◆◆
介護老人保健施設は、在宅復帰のために利用する、
介護保険施設となります。
そして。
長期目標達成のために、段階的に定めた目標が短期目標と
ととらえれば・・・
答えは、見えてきそうですね。
次の事例を読んで,問題66,問題67について答えなさい。
〔事 例〕
Dさん(77歳,男性,要介護2)は,妻と二人で暮らしている。定年まで,高校の体育の教師で野球部の監督をしていた。起居動作に問題はないが,認知症(dementia)と診断されたため,現在.通所介護(デイサービス)を週3回利用している。通所介護(デイサービス)では,短期目標を「役割を持ち意欲的に生活する(3か月)」と設定し,
体操を指導する役割をお願いしていた。
実施Iか月が経過した頃,テレビで高校野球を見たDさんは暗い表情で,「生徒を全国大会に連れて行けなかったのは私の責任だ」と嘆いていた。この日は,担当の介護福祉職が体操の指導をお願いしても,「今すぐ行かなければ」と断った。
開題 66
Dさんが体操の指導を断った理由の解釈として. 最も可能性が高いものを1つ選びなさい。
1 介護福祉職に依頼されたため。
2 妻に会いに自宅に帰りたいため。
3 高校野球のことが気になっているため。
4 立ち上がり動作が不安定なため。
5 体育の授業を行うため。
★問題66正解=3
◆◆解説◆◆
認知症であり、
デイサービスを利用している、Dさん。
定年まで、高校教師であったということは、
野球部の監督は、約20年前の出来事になります。
全国大会に出場できなかったことを、
ずっと、悔いておられたのかもしれないですね。
問題 67
その後も体操の指導を継続していたDさ、んは、参加者から体操の順番が違うと指摘されて指導の意欲を失い,一人でいることが多くなった。しかし,体操の時間になると遠くからその様子を眺めていた。
Dさんが今後も現在の役割を継続するために,優先して取り組むべき課題として,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 体操に対する関心を取り戻すこと。
2 体操の内容を変更すること。
3 体操を指導する自信を回復すること。
4 体操の正しい順番を学び直すこと。
5 指摘した参加者に謝ること。
★問題67正解=3
◆◆解説◆◆
通所介護計画における、Dさんの短期目標は、
『役割を持ち、意欲的に生活すること』。
認知症であることから、おひとりでの体操指導には、
むずかしい部分もあると想像できます。
けれど。
体操の時間になると、遠くからその様子を眺めておられる
ことから、関心はじゅうぶんにお持ちの様子。
スタッフの支援と、指導内容の見直しや工夫・改善により、
自信の回復、体操指導の再開がのぞまれます。
問題 68
Eさん(70歳,女性,要介護I)は,夫,長男と共に農業をしていた。半年前に脳梗塞(cerebral infarction)で左片麻痺になった。現在は介護老人保健施設に入所し,リハビリテーションに取り組んでいる。介護福祉職が居室を訪れたとき,Eさんが,「料理は苦手なの」「そろそろ夏野菜の収穫の時期ね。 ̄収穫は楽しいし,採れたての野菜を近所に配るとみんな喜ぶのよ」と言った。その後,「夫には家事に専念しなさいと言われているから…」とうつむいて言った。
介護福祉職は介護福祉職間のカンファレンス(conference)でEさんの思いを共有した。Eさんの思いとして,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 農業に関わっていきたい。
2 家事に専念したい。
3 後継者の育成に関わりたい。
4 家でのんびりしたい。
5 料理の自信をつけたい。
★問題68正解=1
◆◆解説◆◆
問題 68 正解は 1 といたします
問題64にも登場した、介護老人保健施設は、
在宅復帰のための、通過施設ともいえる、位置づけです。
左片麻痺ではありますが、要介護区分は1のEさん。
収穫の楽しさや、農業をベースにした、仲の良い御近所づきあい
などの御話しからも、
リハビリを続けて、自宅に戻ったら農業に関わってゆきたい
とのおもいが伝わります。
第32回介護福祉士国家試験 試験問題と解答解説 目次
・【問題001~2】 全2問 人間の尊厳と自立
・【問題003~4】 全2問 人間関係とコミュニケーション
・【問題005~16】 全12問 社会の理解
・【問題017~26】 全10問 介護の基本
・【問題027~34】 全8問 コミュニケーション技術
・【問題035~60】 全26問 生活支援技術
・【問題061~68】 全8問 介護過程
・【問題069~76】 全8問 発達と老化の理解
・【問題077~86】 全10問 認知症の理解
・【問題087~96】 全10問 障害の理解
・【問題97~108】全12問 こころとからだのしくみ
・【問題109~113】全5問 医療的ケア
・【問題114~125】全12問総合問題