第32回介護福祉士試験問題解説 【問題69~76】 全8問 発達と老化の理解
<領域:こころとからだのしくみ>
発達と老化の理解
問題 69
Aちゃん(1歳3か月)は,父親に抱かれて散歩中である。前方から父親の友人がやってきて,父親がにこやかに友人と話をしていると, Aちゃんは父親にしがみつき,父親の顔と父親の友人の顔を交互に見ている。しばらくすると,Aちゃんは緊張が解けた様子で,友人が立ち去るときには少し笑顔を見せた。
Aちゃんの様子を説明する用語として,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 3か月微笑
2 社会的参照
3 クーイング
4 自己中心性
5 二項関係
★問題69正解=2
◆◆解説◆◆
さあ、ここからは、『午後の部』です。
まずは、お約束の、『Aちゃん問題』。
そうですね。
過去の本試験においても、
発達と老化の理解では、乳児に関する出題が多く
みられますので、ここは、規定路線。
アンケートでは、ダントツ1位の難問王が、問題69。
いきなり。
あたまのなかまっしろ。
午後の部、1問目に、これ持ってくるかな・・・
なんて、言いたくなった受験生さん、大多数だと
おもわれます。
まずは、
設問1の、『3ヶ月微笑』から、みてみましょう。
新生児期には、寝入りばなや、寝ている間に、
ほんの、1~2秒ほどですが
赤ちゃんが目を閉じたまま、にっこりすることがあります。
これが、「天使の微笑」や「えな笑い」とも呼ばれる、
新生児微笑(生理的微笑)というものですね。
もちろん、
新生児微笑は、おもしろいことや、嬉しいことなど外的な刺激を
受けて笑っているわけではなく、反射的に起こる、この時期特有の
生理的な笑いといわれています
そして・・・
新生児微笑は、生後間もない頃から出てくるようになり、
2ヶ月前後になると、ほとんど消えてしまいます。
そのかわり、
新生児微笑がなくなるとともに、この頃からは人の顔を見て
にっこり笑う『社会的微笑』が見られるようになってきます。
生後3ヶ月頃からはじまることで、
『3ヶ月微笑』と呼ばれているのですね。
生理的な微笑とは異なる、外的刺激を受けての笑いが見られ
始めるということになります。
一般的には、生後3ヶ月頃から、社会的微笑が現われ、
3~4ヶ月頃には嬉しい・楽しいという感情からの笑いが見られ
始めるようになるとされます。
さらに・・・
生後8ヶ月にまで成長すると、日常的に世話をしてくれる
特定の人(主に母親)とそれ以外の人とを認識できるように
なります。
Aちゃんは、現在、1歳3ヶ月ですから、設問1は、(×)に。
設問3の、クーイングとは??
生後1ヶ月頃をすぎると、赤ちゃんは、『クーイング』と呼ばれる
声出しをするようになります。
赤ちゃんが落ち着いていて、ご機嫌のいいとき、
「アー」「ウー」「クー」といった、声を出すことがあります。
これがクーイングですね。
クーイングは、
泣き声や叫び声とは違い、口やのどの形が、変化したために
発せられます。
口や、唇を使わずに発せられ、くつろいだようなゆったりとした声で
ある点が特徴です。
クーイングは、言葉の発達の始まりだとされています。
また、声が出せることをおもしろがっているともいわれています。
クーイングを始める時期には個人差がありますが、早い場合は
生後1ヶ月頃から始まり、2~3ヶ月頃によくするようになるといわれて
います。
よって、設問3も、(×)に。
設問4の、自己中心性とは??
簡単に御説明するなら、
自分自身の視点を中心にして、周囲の世界を見ること。
ピアジェは、これを子どもの思考の特徴として指摘しています。
自分以外の視点に立てないため、たとえば,自分の左右がわかっても
他人の左右がわからないように、ものの客観的関係を理解することが
できません。
さらに、自分自身を客観的に見ることができないため、自分の考えを
意識したり、活動を反省したりすることもないとされます。
子どもの思考に論理性が乏しく、思いついたままのことを何の関連も
つけずに、次々と並べたてるだけですませてしまうのもそのためと
しています。
せっかくの、ピアジェ氏、登場でしたが、
どうやら、設問4も、(×)ですね。
最後に、
設問5の、二項関係をみてみましょう。
私たち人間の、成長において・・・
泣くことで、欲求を伝えていた赤ちゃん(一方的)が
お母さんがあやすと笑う。
これが、「子」と「お母さん」の二項関係
おもちゃをぶんぶん降りまわしたり、投げて
楽しむのは、
「子」と「おもちゃ」の二項関係
そして。
お母さんに、おもちゃを指をさして、
おもちゃ、とってほしいと訴える
「子」と「おもちゃ」と「お母さん」の、
三項関係へと、発展していきます。
設問5も、(×)とかんがえてよさそうですね。
では、
設問2の、社会的参照とは??
生後1年目の後半には、
対象に対する注意を、他者と共有すること(共同注意〉が可能となり、
、
三項関係のコミュ二ケーションが現れてくるとされます。
自己、他者、対象という、三項関係が成立することに伴って、
生後、1年前後にみられる興味深い現象として、
社会的参照(SOCIA LREFERENCING) があげられます。
『社会的参照』とは、
「ある個人が、見知らぬ人やものなどに遭遇した際に、
他者の視線が自分と同じくそれらに注がれていることを
確認したうえで、他者の表情を手がかりに、
それらのものの意味を判断し、それらに対する自らの行動を
調整するようなふるまい」を指します。
なんだか、かたい表現ですが・・・
Aちゃんの、変化に注目です。
お父さんと、お友だちが、にこやかにお話ししているのを
Aちゃんは、見たあとに、
今度は、
お父さんと、お友だちの顔を、交互に見ていますね。
しばらくすると、緊張がとけた様子になります。
そして、立ち去るお友達に、すこし笑顔を見せました。
お父さんの笑顔。
お友達の笑顔。
Aちゃんは、
しばらくのあいだ、これらを見て、笑顔を見せるという、
行動をとったことになります。
1歳前後には、
子どもが自律的に、他者の表情を参照しているのではなく
養育者の側が、子どもの視線を敏感に察知して適切な情報を送ると
いった支えがあって、『社会的参照』は成り立っているのではないかと
かんがえられているそうです。
寒くて、寒くて
前半は、いまひとつスイッチ入らなかった・・・
そんな受験生さんも、おられることでしょう。
勝負はここからです。
後半で、手堅く大量得点!!と まいりましょう。
問題 70
高齢者の年齢規定に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律では,高年齢者を75歳以上としている。
2 「高齢者虐待防止法」では、高齢者を65歳以上としている。
3 高齢者の医療の確保に関する法律では、後期高齢者を65歳以上としている。
4 道路交通法では,免許証の更新の特例がある高齢運転者を60歳以上としている。
5 老人福祉法では,高齢者を55歳以上としている。
(注)
「高齢者虐待防止法」とは,「高齢者虐待の防止,高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」のことである。
★問題70正解=2
◆◆解説◆◆
ここは、持てる知識を総動員して、消去法で
1点、もぎとりたいところでした。
問題 71
加齢に伴う嚥下機能の低下の原因に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 舌骨の位置の上昇
2 咽頭の位置の上昇
3 舌骨上筋の増大
4 喉頭挙上の不足
5 咳嗽反射の増強
★問題71正解=4
◆◆解説◆◆
うーーーーーーーん。
設問5を秒殺しても、むずかしいですね。
高齢者では、
咽頭において、
喉頭(のどぼとけ)の位置が低下しているため、
嚥下する際の、喉頭挙上が不十分となり、上部食道括約筋を
閉じている筋肉の機能不全も生じ、喉頭の閉鎖が不十分で、
誤嚥しやすくなるとされます。
さらに、
咽頭収縮筋の収縮力が低下し、咽頭に、唾液および食物が
残留しやすくなり、誤嚥の危険性が高まります。
なるほど。
のどの、筋力が低下することにより、
のどぼとけの位置が、下がってしまうのですね。
問題72
老年期の記憶と注意機能に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 自分の若い頃の記憶では, 40歳代の頃の出来事をよく覚えている。
2 数字の逆唱課題で答えられる数字の個数は,加齢による影響を受けない。
3 複数のことを同時に行う能力は,加齢によって低下する。
4 騒がしい場所での作業効率は,若年者より」高齢者が高い。
5 エピソード記憶は,加齢による影響を受けない。
★問題72正解=3
◆◆解説◆◆
ここも消去法で、手堅く1点、追加を。
問題 73
高齢者において,心不全(heart failure)が進行したときに現れる症状に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 安静にすることで速やかに息切れが治まる。
2 運動によって呼吸苦が軽減する。
3 チアノーゼ(cyanosis)が生じる。
4 呼吸苦は,座位より仰臥位(背臥位)の方が軽減する。
5 下肢に限局した浮腫が生じる。
★問題73正解=3
◆◆解説◆◆
心不全は、
「疾患」ではなく「状態」をあらわす名称です。
心臓は、全身への血液循環、および栄養運搬機能を担い、
私たちは、
この働きによって健康に生活することができるのですね。
このような心臓の機能がうまく働かなくなると、全身に血液が
行き渡らなくなり、全身状態の悪化をきたします。
この状態を、「心不全」と呼びます。
心不全の代表的な自覚症状は、
動悸や息切れ、呼吸困難、むくみです。
最初は、坂道や階段を上る時に、動悸や息切れが起こり、
病状が進行すると、平地を歩いても息苦しくなります。
さらに進むと、
夜、床につくと咳が出たり、息苦しさで寝られなく
なったりします。
また、足にむくみが出ることもあります。
心不全が、進行してしまうと・・・
心臓のポンプ機能の低下に伴い、
四肢の冷感・チアノーゼがみられるようになります。
末梢に血液が行きにくいため、頬、耳たぶ、手足の
指先が冷たく、青色を帯びてきます。
問題74
Bさん(82歳,男性)は脳卒中(stroke)による右片麻痺がある。ほとんどベッド上の生活で,排泄もおむつを使用している。
37.2℃の微熱で,元気がなく,いつもよりも動きが少なかった。
食欲も低下して食事を残すようになっていた。今日,おむつの交換をしたときに仙骨部の皮膚が赤くなり一部に水疱ができていた。
Bさんの皮膚の状態とその対応に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 圧迫によって血流が悪くなったためである。
2 仙骨部にこうしたことが起こるのは,まれである。
3 食事量の低下とは無関係である。
4 体位変換は,できるだけ避ける。
5 おむつの交換は,できるだけ控える。
★問題74正解=1
◆◆解説◆◆
鬼のような設問ばっかり。
問題 75
次のうち,高齢者の栄養状態を良好に維持するための対応として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 歯科健康診査を受ける。
2 複数の薬剤を併用する。
3 外出を控える。
4 一人で食事をする。
5 たんぱく質を制限する。
★問題75正解=1
◆◆解説◆◆
問題 75 正解は 1 といたします
ここにも、鬼ばっかり。
問題 76
糖尿病(diabetes mellitus)のある高齢者(要介護1)が転倒して,骨折(fracture)した。入院治療後に再び自宅療養を続けるための専門職の役割として,正しいものを1つ選びなさい。
1 看護師は、糖尿病(diabetes mellitus)の薬の処方箋を交付する。
2 理学療法士は,糖尿病(diabetes mellitus)の食事メニューを考える。
3 管理栄養士は,自宅で料理ができるような作業訓練をする。
4 訪問介護員(ホームヘルパー)は,居宅サービス計画を立案する。
5 介護支援専門員(ケアマネジャー)は,訪問リハビリテーションの利用を提案する。
★問題76正解=5
◆◆解説◆◆
問題 76 正解は 5 といたします
類似タイプの問題が、前半にもありましたね。
読み間違え厳禁です。
第32回介護福祉士国家試験 試験問題と解答解説 目次
・【問題001~2】 全2問 人間の尊厳と自立
・【問題003~4】 全2問 人間関係とコミュニケーション
・【問題005~16】 全12問 社会の理解
・【問題017~26】 全10問 介護の基本
・【問題027~34】 全8問 コミュニケーション技術
・【問題035~60】 全26問 生活支援技術
・【問題061~68】 全8問 介護過程
・【問題069~76】 全8問 発達と老化の理解
・【問題077~86】 全10問 認知症の理解
・【問題087~96】 全10問 障害の理解
・【問題97~108】全12問 こころとからだのしくみ
・【問題109~113】全5問 医療的ケア
・【問題114~125】全12問総合問題