第32回介護福祉士試験問題解説 問題5-16 【領域:人間と社会】社会の理解
社会の理解
問題 5
地域包括ケアシステムでの自助・互助・共助・公助に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 自助は,公的扶助を利用して,自ら生活を維持することをいう。
2 互助は,社会保険のように制度化された相互扶助をいう。
3 共助は,社会保障制度に含まれない。
4 共助は,近隣住民同士の支え合いをいう。
5 公助は,自助・互助,共助では対応できない生活困窮等に対応する。
★問題5正解=5
◆◆解説◆◆
ちょっと。
なにいってるか。
よくわからない。
そんな受験生さん、ぜったいに多いはず。
前半、早々に、気分がブルーになりますが、
ちょこっとだけ御一緒に。
まずは、『地域包括ケアシステム』の定義から。
『地域の実情に応じて、高齢者が、可能な限り、
住み慣れた地域で、その有する能力に応じ自立した、
日常生活を営むことができるよう、医療、介護、介護予防、
住い、及び、自立した日常生活の支援が包括的に確保される
体制』。
これが、地域包括ケアシステム。
高齢者おひとり、おひとりを、まるっと、支えるシステム・・・
こんなイメージでしょうか。
その、具体的な支えの内容が、問題5で問われている、
『自助』、『互助』、『共助』、『公助』 です。
公的なものだけでも、
あるいは、
地域独自のものだけでも、
包括的に支えることはむずかしいもの。
大きな4つのカテゴリーが、総合的に働きかけてこそ、
地域包括ケアシステム。
設問1の、自助は、
セルフケアなどや、市場サービスの購入などを
いいます。
設問2の、互助は、
お互いという字からも想像できるように、
住民組織の活動や、ボランティア活動などを
いいます。
設問3の、共助は、
介護保険に代表される、社会保険制度、および、
そのサービスのことですね。
設問4は、スルーで。
設問5の、公助は、
公という字から、公的なものがイメージできるように、
一般財源による高齢者福祉事業や、生活保護。
人権擁護、虐待対策などをいいます。
厚生労働省の資料などでも、ご覧になりますので。
御時間のあるときに、画像検索を。
問題 6
「働き方改革」の考え方に関する記述として,適切なものを1つ選びなさい。
1 長時間労働は日本社会の特質で,時間外労働の限度の設定は困難である。
2 有給休暇の取得よりも,働くことが優先される。
3 働く人々のニーズに応じた,多様な働き方を選択できる社会の実現を図る。
4 正規雇用労働者と非正規雇用労働者の待遇の格差が存在することは,当然である。
5「働き方改革」は,中小企業は対象でない。
(注)ここでいう「働き方改革」とは,「働き方改革を推進するための関係法律の整備
に関する法律」に基づく諸施策の実施のことである,
★問題6正解=3
◆◆解説◆◆
『働き方改革』。
いきなりの登場で、ひるみますが・・・
設問は、どれもヒント満載ですから、
落ち着いて消去法でのぞめば、
ここでも、1点追加ですよね。
厚生労働大臣の御名前が、みなさまの合格証書に明記される
ことからも、内閣府の推進するさまざまな法率や制度もまた、
試験に多く、出題されることになります。
『働き方改革』も、その1つ。
2018年の通常国会で、
働き方改革関連法(正式名は「働き方改革を推進するための関係法律の
整備に関する法律」)が成立しました。
この働き方改革関連法は、1つの法律ではなく、
いくつもの法律の改正が含まれるもので、
労働基準法、労働安全衛生法、労働契約法、パート法、派遣法
などの法律が対象となっており、改正内容も多岐にわたるものです。
実は、労働人口が、想像以上に減少していることが、
改革推進の背景。
このあたりが、改革内容の理解につながりやすいですね。
問題 7
日さん(80歳,女性,要介護1)は,身寄りがなく一人暮らしをしている。
老齢基礎年金で暮らしてきたが,貯金が少なくなり,生活が苦しくなってきた。
このため2万円の家賃支払いも困難になり, 通所介護事業所のC生活相談員に,費用
がかかる通所介護(デイサービス)の利用をやめたいと言ってきた。
C生活相談員の対応として,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 介護支援専門員(ケアマネジャー)に,通所介護(デイサービス)の利用中止を依頼する。
2 介護支援専門員(ケアマネジヤ←)に,サービス担当者会議で利用中止の検討を依頼する。
3 福祉事務所に相談するように助言する。
4 これまでどおりの利用を説得する,
5 無料で利用できる地域の通所型サービスを探す。
★問題7正解=3
◆◆解説◆◆
2万円の、家賃の支払いが困難な状況・・・
設問5で、迷った受験生さんもおられるとおもいます。
実際には、同時進行でサービスを探すこともOKですが、
試験合格用の解答として、
まずは、経済的安定を図ることが、大前提。
ここは、大人の対応として、設問3にいたしました。
問題 8
2015年度(平成27年度)以降の社会保障の財政に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 後期高齢者医療制度の財源で最も割合が大きいものは,後期高齢者の保険料である。
2 社会保障給付費の財源では,税の占める割合が最も大きい。
3 生活保護費の財源内訳は。社会保険料と税である。
4 国の一般会計予算に占める社会保障関係費の割合は, 30%を超えている。
5 社会保障給付費の給付額では,医療費の構成割合が最も大きい。
★問題8正解=4
◆◆解説◆◆
学生の頃に、歳入、歳出って、習いましたが・・・
国会で決められた予算により、歳出の内訳、つまり税金の使いみちが決まります。
国の歳出のうち、一番多く使われているのは、社会保障関係費です。
社会保障とは、私たちが安心して生活していくために必要な「医療」、「年金」、
「福祉」、「介護」、「生活保護」などの公的サービスのことととらえれば、
イメージしやすいですね。
日本の社会保障は、 1960年代には、失業対策や生活保護などが中心でした。
その後、次第に医療保険や年金制度などの社会保険や、 老人福祉を中心とする
社会福祉、介護などに 重点が移ってきました。
平成31年度では、
社会保障関係費は、歳出総額の30パーセントを超えています。
問題9
介護保険制度の被保険者に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 加入は任意である。
2 第一号被保険者は, 65歳以上の者である。
3 第二号被保険者は. 20歳以上65歳未満の医療保険加入者である。
4 第一号被保険者の保険料は,都道府県が徴収する。
5 第二号被保険者の保険料は,国が徴収する。
★問題9正解=2
◆◆解説◆◆
楽勝!!と、にんまりしちゃう問題こそ。
あわてず。
ミスらず。
手堅く、1点に。
問題 10
介護予防・日常生活支援総合事業に含まれる事業として,適切なものを1つ選びなさい。
1 家族介護支援事業
2 予防給付
3 介護給付
4 権利擁護事業
5 第一号訪問事業(訪問型サービス)
★問題10正解=5
◆◆解説◆◆
問題9にも登場した、介護保険制度。
2000年4月に産声をあげて以来、
どんどん成長しています。
これまでの介護給付、予防給付も継続しつつ、
NEWタイプのサービスも利用可能となって
いるのですね。
『地域支援事業』とは、
2006年に創設された事業で、
被保険者が要介護状態等になることを予防するとともに、
要介護状態等となった場合でも、できる限り、地域で自立した
日常生活を営むことができるよう支援することなどを目的に、
市町村責任実施主体となって実施されます。
この事業の大きな3つのカテゴリーの1つにあたるのが、
介護予防・日常生活支援総合事業で、
設問5の、第一号訪問事業は、この事業の1つに該当します。
問題 11
障害福祉計画に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 厚生労働大臣は基本的な指針を定めなければならない。
2 都道府県による策定は努力義務である。
3 市町村による策定は努力義務である。
4 障害児福祉計画とは計画期間が異なっている。
5 文化芸術活動・スポーツの振興についての目標設定をしなければならない。
★問題11正解=1
◆◆解説◆◆
5つの設問、どれもが正しく思える、難問でした。
みんなが難しいと感じる問題は、正答できなくても
大丈夫。
誰もが得点できる問題を、取りこぼさないことが
いちばん大切です。
さて。
『障害者福祉計画』とは、
障害者の地域生活を支援するためのサービス基盤整備等に係る、
平成26年度末の数値目標を設定するとともに、障害福祉サービス及び
相談支援並びに、市町村及び、都道府県の地域生活支援事業を提供する
ための体制の確保が計画的に図られるようにすることを目的とします。
根拠となる法律は、
『障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律』で、
その、条文を読み進めてゆきますと、以下の記載があります。
(基本指針)
第八十七条
厚生労働大臣は、障害福祉サービス及び相談支援並びに市町村及び都道府県の
地域生活支援事業の提供体制を整備し、自立支援給付及び地域生活支援事業の
円滑な実施を確保するための基本的な指針(以下「基本指針」という。)を定める
ものとする。
このことから、設問1が、正解なのですね。
でも・・・
設問4で、迷った受験生さんも多いとおもいます。
障害児福祉計画とも、一体的に策定されますので、
設問4は、(×)に。
設問5も、まことしやかな内容ですが、ひっかけです。
問題 12
Dさん(60歳,女性)は,交通事故で下肢に障害が生じた。現在入院中のDさんは退院後,
在宅での生活を続けるために,「障害者総合支援法」の障害福祉サービス(居宅介護)の利用を希望している。
Dさんが障害福祉サービス(居宅介護)を利用するための最初の手続きとして,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 地域包括支援センターに相談する。
2 医師の診断書を居住する市町村に提出する。
3 障害福祉サービス(居宅介護)を提供している事業所と契約する。
4 居住する市町村の審査会に,障害福祉サービス(居宅介護)の利用を申し出る。
5 居住する市町村の担当窓口に,障害福祉サービス(居宅介護)の支給申請をする。
(注)「障害者総合支援法」とは,「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」のことである,
★問題12正解=5
◆◆解説◆◆
設問1では?と、迷った受験生さんも多いとおもいます。
問題の文章がみじかく、詳細もわかりづらいのですが、
60歳で、交通事故による下肢の障害をもつDさんは、
介護保険制度の利用はそぐわないと判断します。
Dさんが、退院後、障害者福祉サービスを利用するための
手続きに入る段階まで、おはなしは進んでいると理解すると、
具体的な申し込み(申請)について、正しい設問を選ぶことに。
障害者総合支援法に基く、障害福祉サービスの支給申請は、
居住する市町村に行ないますので、設問5が、正解なのですね。
サービス利用開始までの、一連のプロセスも知っておくと、
御仕事にもおおいに役立ちますので、ぜひ頑張って。
問題 13
2018年度(平成30年度)に創設された共生型サービスの対象となるサービスとして,正しいものを1つ選びなさい。
1 訪問看護
2 共同生活援助(グループホーム)
3 同行援護
4 通所介護(デイサービス)
5 通所リハビリテーション
★問題13正解=4
◆◆解説◆◆
いつのまにか。
ふえてるし。
なんて、ぼやきたくなりますね。
介護保険制度と障害福祉サービス。
線引きがある部分と、柔軟に対応でという部分の
2面性をもちます。
当然に、サービス事業者さんに関する決まりごとも
かわりつつあります。
『共生型サービス』の誕生ですね。
このサービスは、
2018年 4月から、スタートしました。
地域における、一体的なサービスの提供を支援するため、
介護保険と障害福祉の両制度に創設され、
『訪問介護』、『通所介護』、『短期入所生活介護』が、
対象です。
めざすは。
介護保険制度と、障害者総合支援制度の、バリアフリー化。
問題 14
自閉症(autism)のEさん(22歳,男性,障害支援区分5)は,就労支援施設に通所している。
こだわりが強く,毎月購入している雑誌を処分するとパニックになってしまう。
「障害者虐待防止法」の視点を踏まえて,Eさんの気持ちが安定するように,
施設
の介護福祉職がEさんにかける言葉として,最も適切なものを1つ選びなさい。
1「決まりですから捨てますよ」
2「読みたい雑誌はとっておきましょう」
3「古紙として再生利用しますからね」
4「Eさんにこの雑誌をあげるわけにはいかないんですよ」
5「次の新しい雑誌がきますよ」
(注)「障害者虐待防止法」とは,「障害者虐待の防止,障害者の養護者に対する支援等に関する法律」のことである。
★問題14正解=2
◆◆解説◆◆
むずかしく考えすぎないで、ここは1点追加と
いきたいですね。
問題 15
成年後見制度に関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。
l 「2018年(平成30年)の全国統計]によれば,補助,保佐,後見のうち,最も多い申立ては後見である。
2 「2018年(平成30年)の全国統計」によれば
3 成年後見人は,施設入所の契約だけでなく介護も行う。
4 任意後見制度では,候補者の中から家庭裁判所が成年後見人を選任する。
5 成年後見制度利用支援事業では,成年後見人への報酬は支払えない。
(注)「2018年(平成30年)の全国統計」とは,「成年後見関係事件の概況一平成30年1月~12月」(平成31年3月最高裁判所事務総局家庭局)のことである。
★問題15正解=1
◆◆解説◆◆
ひっかけてんこ盛りですが・・・
厚労省資料による、統計結果によりますと、
以下の数字になります。
◆ 後見開始の審判の申立件数は、27989件。
◆ 保佐開始の審判の申立件数は、6297件。
◆ 補助開始の審判の申立件数は、1499件。
圧倒的に、後見が多いのですね。
ちなみに、
成年後見人への報酬は認められており、金額も
さまざまです。
利用には、実費がかかるわけですね。
そのため、御自身で報酬を支払えないけれど、
後見人等が必要な人に対して、各自治体では、
成年後見制度利用支援事業において、費用の助成を
行なっています。
問題 16
生活保護法における補足性の原理の説明として,適切なものを1つ選びなさい。
1 国の責任において保護を行う。
2 全ての国民に無差別平等な保護を行う。
3 健康で文化的な生活を維持できる保護を行う。
4 資産・能力等を活用した上で保護を行う。
5 個人または世帯の必要に応じて保護を行う。
★問題16正解=4
◆◆解説◆◆
すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する
とする、
日本国憲法第25条に基く、生活保護法。
第八条には、以下のようにあります。
保護は、厚生労働大臣の定める基準により測定した要保護者の
需要を基とし、そのうち、その者の金銭又は物品で
満たすことのできない不足分を補う程度において行うものとする。
あくまで。
足りない部分のみ。
これが、補足性の原理となります。
憲法に基くことから、国がすべてカバーしているように
かんじますが、財源は、国が、4分の3を負担。
責任実施自治体が、4分の1を負担します。
責任実施主体は、福祉事務所を置く、23区、市町村などと
なります。
第32回介護福祉士国家試験 試験問題と解答解説 目次
・【問題001~2】 全2問 人間の尊厳と自立
・【問題003~4】 全2問 人間関係とコミュニケーション
・【問題005~16】 全12問 社会の理解
・【問題017~26】 全10問 介護の基本
・【問題027~34】 全8問 コミュニケーション技術
・【問題035~60】 全26問 生活支援技術
・【問題061~68】 全8問 介護過程
・【問題069~76】 全8問 発達と老化の理解
・【問題077~86】 全10問 認知症の理解
・【問題087~96】 全10問 障害の理解
・【問題97~108】全12問 こころとからだのしくみ
・【問題109~113】全5問 医療的ケア
・【問題114~125】全12問総合問題