第32回介護福祉士試験問題解説【問題077~86】 全10問 認知症の理解
認知症の理解
問題 77
2012年(平成24年)の認知症高齢者数と2025年(平成37年)の認知症高齢者数に関する推計値(「平成29年版高齢社会白書」(内閣府))の組合せとして,適切なものを1つ選びなさい。
1 162万人 ― 約400万人
2 262万人 ― 約500万人
3 362万人 ― 約600万人
4 462万人 ― 約700万人
5 562万人 ― 約800万人
(注)平成37年とは令和7年のことである。
★問題77正解=4
◆◆解説◆◆
問題 77 正解は 4 といたします
難問アンケート、現在、第2位爆走中!!の
ノーヒント高齢者白書問題。
認知症者数の将来推計は、今後、下記のように
想定されるそうです。
今後は、
後期高齢者の増加に伴い、増加の一途をたどります。
厚労省によりますと、
2025年の 認知症高齢者数は、【約700万人】!!
これって、高齢者の約20パーセントです。
ちなみに、
2012年の認知症高齢者数は、【約462万人】でした。
2060年には、
1000万人!!との推測ですから、
我われのもつイメージよりも、
はるかに、多くおられるのではないでしょうか?
問題 78
認知症(dementia)の行動・心理症状(BPSD)に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 トイレの水を流すことができない。
2 物事の計画を立てることができない。
3 言葉を発することができない。
4 親しい人がわからない。
5 昼夜逆転が生じる。
★問題78正解=5
◆◆解説◆◆
問題 78 正解は 5 といたします
認知症は、
加齢に伴い脳の神経細胞が壊れることによって、
様々な症状が出現しますが、
中核症状と、周辺症状(BPSD)に分けることが
できます。
初期には「記憶障害」「判断力の障害」「失語」などの、
認知症の方に共通する、中核症状が現れます。
その一方で、
周辺症状(BPSD)は個人差がありますが、
身体的・精神的なストレスなどが原因で出現します。
『昼夜逆転』も、BPSDの1つとされ、
昼寝の時間が増えたり、夜間に眠れず不安になって興奮したり
大声を出したり、夜中ですが、何かしらの活動を始めることも
あります。
この状態が続くと、
ご本人も体調を崩し、認知症状を進めることにも
なりますし、夜中に何度も起こされてしまうなどの状態に
なった場合、家族の日常生活にも支障が及んできます。
問題 79
高齢者のせん妄(delirium)の特徴として,最も適切な,ものを1つ選びなさい。
1 薬剤によって生じることがある。
2 症状の変動は少ない。
3 意識レベルは清明であることが多い。
4 徐々に悪化する場合が多い。
5 幻覚を伴うことは少ない。
★問題79正解=1
◆◆解説◆◆
問題 79 正解は 1 といたします
実に多くの誘因によって、引き起こされるのが、
『せん妄』。
急性アルコール中毒、モルヒネ、鎮静薬、睡眠補助薬、
抗うつ薬、抗精神病薬、抗ヒスタミン薬、コルチコステロイド薬、
筋弛緩薬、パーキンソン病治療薬(レボドパ)などによる、
せん妄もあります。
また、
長期間服用していた薬剤を、急に断った時にも症状が出ることが
あるため、要注意ですね。
問題 80
認知症(dementia)の初期症状に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 血管性認知症(vascular dementia)では,幻視が認められる。
2 正常圧水頭症(normal pressure hydrocephalus)では,歩行障害が認められる。
3 前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia)では,エピソード記憶の障害が認められる。
4 アルツハイマー型認知症(dementia of the Alzheimer’s type)では,失禁が認められる。
5 レビー小体型認知症(dementia with Lewy bodies)では,もの盗られ妄想が認められる。
★問題80正解=2
◆◆解説◆◆
問題 80 正解は 2 といたします
すこし前の、TV番組で、
『治せる認知症』として紹介されていましたので、
御存知のかたも多いのではないでしょうか?
『正常圧水頭症』では、
1日に、500ミリリットルほどの量を、
脳室でつくられる、脳脊髄液の吸収場所が
詰まってしまうことにより、脳の周囲や、
脳脊髄液が溜まり、認知機能の低下を招きます。
『正常圧水頭症』では、独特の症状がみられると
されます。
① ぼーっとして、反応がにぶい
② 摺り足で小股に歩く、歩行障害
③ 尿失禁
問題 81
認知症(dementia)の発症リスクを低減させる行動に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 抗認知症薬を服用する。
2 睡眠時間を減らす。
3 集団での交流活動に参加する。
4 運動の機会を減らす。
5 飽和脂肪酸を多く含む食事を心がける。
★問題81正解=3
◆◆解説◆◆
問題 81 正解は 3 といたします
ここも、、
読み間違えなく、追加点を!!
問題 82
抗認知症薬に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 若年性アルツハイマー型認知症(dementia of the Alzheimer’s type with early onset)には効果がない。
2 高度のアルツハイマー型認知症(dementia of the Alzheimer’s type)には効果がない。 ・ I ’
3 レビー小体型認知症(dementia with Lewy bodies)には効果がない。
4 症状の進行を完全に止めることはできない。
5 複数の抗認知症薬の併用は認められていない。
★問題82正解=4
◆◆解説◆◆
問題 82 正解は 4 といたします
残念ながら、『完治』を期待することは
むずかしい状況です。
ただし。
認知症疾患診療ガイドラインに沿って、
全国で、標準的な治療法がすすめられています。
エビデンスに基く治療と、
ひとり、ひとりの患者さんの状態に根ざした
治療との、組み合わせの効果が期待されますね。
問題 83
前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia)の症状のある人への介護福祉職の対応として,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 周回がある場合は. GPS追跡機で居場所を確認する。
2 甘い食べ物へのこだわりに対しては,甘い物を制限する。
3 常同行動かある場合は,本人と周囲の人が納得できる生活習慣を確立する。
4 脱抑制がある場合は,抗認知症薬の服薬介護をする。
5 施設内で職員に暴力をふるったときは,警察に連絡する。
★問題83正解=3
◆◆解説◆◆
問題 83 正解は 3 といたします
『前頭側頭型認知症』とは、
「神経変性」による認知症の一つで、脳の一部である「前頭葉」や
「側頭葉前方」の委縮がみられ、他の認知症にはみられにくい、
特徴的な症状を示します。
神経変性による認知症は、脳の中身である神経細胞が徐々に
減ってしまったり、一部に本来みられない細胞ができ、
脳が委縮することで発症することがわかっています。
脳の中で
前頭葉は、人格・社会性・言語を
側頭葉は、記憶・聴覚・言語を主に
つかさどっています。
そのため、
前頭側頭葉型認知症を発症すると、これらが正常に
機能しなくなることにより、特徴的な症状が表れます。
『常同行動』も、その1つで、
いつも同じ道順を歩き続ける、同じような動作を取り続けると
いった、同じ行動を繰り返すようになります
残念ですが、
前頭側頭型認知症に対して、症状を改善したり、進行を防いだりする
有効な治療方法は、まだ開発されていません。
前頭側頭型認知症の特徴的な症状に対して、抗精神病薬を処方する
対症療法が主に行われています。
問題 84
Cさん(78歳,男性,要介護2)は, 4年前にアルッハイマー型認知症(dementia of the Alzheimer’s type)と診断を受け,通所介護(デイサービス)を週1回利用している。以前からパソコンで日記をつけていたが,最近はパソコンの操作に迷い。イライラして怒りっぽくなったと娘から相談を受けた。介護福祉職が娘に対して最初に行う助言の内容として,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 パソコンの処分
2 パソコンの使い方の手助け
3 日記帳の購入
4 薬物冶療について主治医に相談
5 施設入所について介護支援専門員(ケアマネジャー)に相談
★問題84正解=2
◆◆解説◆◆
問題 84 正解は 2 といたします
シンプルすぎて。
かえって。
まよいますね。
娘さんが手伝うよって言ったら、
さらに怒っちゃうから、相談したのかも・・・
なんて、深読みは禁止です。
問題 85
認知症対応型共同生活介護(グループホニム)で生活している軽度のアルツハイマー型認知症(dementia of the Alzheimer’s type)のDさんは,大腿骨の頚部を骨折(fracture)して入院することになった。認知症対応型共同生活介護(クループホーム)の介護福祉職が果たす役割としで,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 理学療法士に,リハビリテーションの指示をしても理解できないと伝える。
2 介護支援専門員(ケアマネジャー)に,地域ケア会議の開催を依頼する。
3 医師に,夜間は騒ぐ可能性があるので睡眠薬の処方を依頼する。
4 看護師に,日常生活の状況を伝える。
5 保佐人に,治療方法の決定を依頼する。
★問題85正解=4
◆◆解説◆◆
問題 85 正解は 4 といたします
ここも、貴重な1点、追加で。
問題 86
Eさん(75歳,男性)は, 1年ほど前に趣味であった車の運転をやめてから,やる気が起こらなくなり自宅に閉じこもりがちになった。そのため,家族の勧めで介護予防教室に参加するようになった。最近, Eさんは怒りっぽく,また,直前の出来事を覚えていないことが増え,心配した家族が介護福祉職に相談した。
相談を受けた介護福祉職の助言として,最も適切なものを1つ選びなさい。
1「認知症(dementia)でしょう」
2「趣味の車の運転を再開するといいでしょう」
3「老人クラブに参加するといいでしょう」
4「音楽を流して気分転換するといいでしょう」
5「かかりつけ医に診てもらうといいでしょう」
★問題86正解=5
◆◆解説◆◆
問題 86 正解は 5 といたします
御家族が気づかない、Eさんの心身の変化も
有り得ます。
主治医による診察や、各種検査がのぞまれますね。
第32回介護福祉士国家試験 試験問題と解答解説 目次
・【問題001~2】 全2問 人間の尊厳と自立
・【問題003~4】 全2問 人間関係とコミュニケーション
・【問題005~16】 全12問 社会の理解
・【問題017~26】 全10問 介護の基本
・【問題027~34】 全8問 コミュニケーション技術
・【問題035~60】 全26問 生活支援技術
・【問題061~68】 全8問 介護過程
・【問題069~76】 全8問 発達と老化の理解
・【問題077~86】 全10問 認知症の理解
・【問題087~96】 全10問 障害の理解
・【問題97~108】全12問 こころとからだのしくみ
・【問題109~113】全5問 医療的ケア
・【問題114~125】全12問総合問題