第22回精神保健福祉士国家試験問題と解説 精神保健福祉相談援助の基盤(21-35)

第22回精神保健福祉士国家試験問題と解説

精神保健福祉相談援助の基盤

問題 21
U精神科病院に勤めるA精神保健福祉士は,担当患者のBさんへの支援が思うように展開できないでいた。Bさんは,障害年金と親の多額の遺産金で暮らしているが,「お金がない。生活保護を受けられないか」と何度も訴えていた。
A精神保健福祉士は, Bさんが他の患者にお金を貸したり,欲しいものをすぐに買ったりして無駄遣いをしているのに生活保護を受けたいと主張することを好ましく思っていなかった。そのため,どうしてBさんが同じ主張を繰り返すのかについて,その背景に何かあるかもしれないということは気になっていたが,いつも一方的な態度をとるBさんを受け入れられず,「遺産金があるので,生活保護を申請することは難しい」と繰り返し説明していた。

次のうち,A精神保健福祉士が抱く倫理的ジレンマとして,適切なものを1つ選びなさい。

1 自己決定とパターナリズム
2 専門職的価値と個人的価値
3 バウンダリーとクライエントの利益
4 クライエントの利益と所属機関の利益
5 秘密保持とプライバシー

 

 

★解答2
★★解説★★

問題 22
福祉サービスを提供する際のリスクマネジメントに関する次の記述のうち,適切なものを2つ選びなさい。

1 サービスを提供する際に,利用者の自立よりも安全を重視する。
2 事故の未然防止の観点から,利用者に対して均一なサービスを提供する。
3 ヒヤリハット情報やクレームから,潜在的なリスクを抽出する。
4 リスクマネジメントの基本は,危機管理体制の確立よりも,個別事故への対応を優先する。
5 利用者から苦情が寄せられた際には,迅速に対応する。

 

 

★解答35
★★解説★★

問題 23
ソーシャルワークの理論の発展に貢献した人物とそのアプローチに関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。

1 カプラン(Caplan, G.)は,ソーシャルワークに生態学的な視点を導入し,その実践モデルをエコロジカルアプローチとした。
2 ジャーメイン(Germain, C.)は,クライエントの心理的側面や生活史を重視し,診断主義アプローチを提唱した。
3 トール(Towle, C.)は,家族療法の各流派の知見を統合し,多元的な家族中心アプローチを構築した。
4 トーマス(Thomas, E.)は,学習理論の応用に基づく多様な行動変容の方法を整理し,行動変容アプローチとして確立した。
5 ハートマン(Hartman, A.)は,危機の状況から効果的で早急に脱出することを目的とした危機介入アプローチの基礎を築いた。

 

 

★解答4
★★解説★★

問題 24
社会における正義の実現に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 ロールズ(Rawls. J.)が『正義論』で主張した格差原理は,その社会において最も恵まれない人が有利となるよう,資源の配分を目標とした。
2 キムリッカ(Kymlicka. W.)による多文化主義は,固有の文化や生活様式を保持するため,同化政策の確立を目標とした。
3 ベンサム(Bentharm, J.)による功利主義は,人々の直:感から得られた快の総量を計り,「最大多数の最大幸福」の実現を目標とした。
4 サンデル(Sandel. M.)によるコミュニタリアニズムは,自己の在り方を「負荷なき自己」と捉え,共同体への帰属から自由になることを目標とした。
5 フリーダン(Friedan,B.)らによる第二波フェミニズムは,「個人的なことは政治的なことである」というスローガンの下,家父長制の維持を目標とした。

 

 

★解答1
★★解説★★

問題 25
V精神科病院で薬物依存症者の家族教室を担当しているC精神保健福祉士は,家族教室に参加したDさんが,「覚醒剤使用歴がある息子が,求職活動をしても,なかなか理解してもらえず,就職できない」と悔しそうに語るのを聞いた。
薬物依存症に対する差別や偏見をなくすことを目的とした家族会の支援をしていたC精神保健福祉士は,家族教室終了後, Dさんに声を掛け,やりきれない思いを受容するとともに,家族会に関する情報提供を行った。その後. C精神保健福祉士は家族会に参加するようになったDさんと共に,家族会メンバーと力を合わせて,薬物依存症のことを理解してもらうための講演会を開催したり,利用できる新たなサービスを求めるための署名運動を行い,行政機関に働き掛けたりするようになった。
次のうち, C精神保健福祉士が家族会と共に行った内容として,適切なものを1つ選びなさい。

1 ソーシャルアドミニストレーション
2 ソーシャルアクション
3 ソーシャルビジネス
4 ソーシャルキャピタル
5 ソーシャルプランニング

 

 

★解答2
★★解説★★

★★★問題26後で追加

問題 27 
次のうち,「障害福祉サービス等の提供に係る意思決定支援ガイドライン」 (平成29年3月厚生労働省)の内容として,正しいものを2つ選びなさい。

1 本人の自己決定に必要な情報の説明は,本人が理解できるよう工夫して行うことが重要である。
2 意思決定を支援する施設職員と成年後見人がいる場合,前者の決定を優先する。
3 職員等の価値観において不合理と思われる決定は,職員の判断で代理決定することが求められる。
4 相反する選択肢を両立させることはせず,本人にとってどちらが最善の利益かを判断する。
5 本人の自己決定や意思確認がどうしても困難な場合は,本人をよく知る関係者が集まって,様々な情報を把握し,根拠を明確にしながら意思及び選好を推定する。

 

 

★解答15
★★解説★★

問題 28 
精神科病院で精神保健福祉士が行う人権擁護に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1「退院はさせないでください」という家族からの求めに応じ,患者に入院の継続を勧める。
2「もう歳だから」と退院を諦めている長期入院の患者に対して,退院の動機づけを行う。
3「もう家に帰ります」と突然怒り出した患者を心配し,隔離室に入室させる。
4「迷惑電話で困っている」という近所の店舗からの苦情を受け,患者が電話をかける機会を制限する。
5「二人だけで面会させてください」と希望する患者の病状を面会時に判断して,面会に立ち会う。

 

 

★解答2
★★解説★★

問題 29 
マクロ領域のソーシャルワークに関する次の記述のうち,適切なものを2つ選びなさい。

1 社会福祉制度が効果的に運用されるために,環境の調整や整備を行う。
2 福祉問題の原因を社会構造から捉え,個人の変化を促す支援を行う。
3 福祉関連施策の分析や充実に向けた活動を行い,社会の変革を進める。
4 グループの持つ力動を活用し,個人の成長や個人と社会環境との関係調整を行う。
5 福祉サービス利用者とその家族に働き掛け,家族内ネットワークを形成する。

 

 

★解答13
★★解説★★

(精神保健福祉相談援助の基盤・事例問題1)
 ある日. E精神保健福祉士の下に,以前支援していたFさんから手紙が届いた。次の手紙(事例)を読み,問題30から問題32までについて答えなさい。

「事 例1
前略
 お久しぶりです。お元気でしょうか。私は変わりなく,毎日W地域活動支援センターに通っています。先日,心の整理もつき,母が亡くなってから3年ぶりに,やっとお墓参りに行ってきました。そこでふとEさんのことを思い出し,手紙を書かせていただきました。Eさんにお会いしたのは,入院して10年が過ぎようとした頃でした。
あの頃は長い入院生活か続き希望も持てず,スタッフにやってもらうことが当た前の,全てが受け身の生活でした 。 (問題30)

 しかし病気の母を看取りたいと思うようになり退院しましたよね。間もなく母が亡くなり,何か昼間にできることはないだろうかとEさんに相談しました。
 私はこれまでの人生を振り返り,母に従ってきたこと,それが正しいことだと思っていたことを話しました。Eさんは私の話をじっくりと聞き,「これまで,大変だったのですね。でも今のFさんは退院後も規則正しい生活を送り,何かをしてみたいと,いう向上心がありますよね」と話してくれました。(問題31)

 相談の後, Eさんが立ち上げに関わったW地域活動支援センターを紹介され,自由に話し合える雰囲気が気に入り利用することにしました。そこで病気について勉強する講座を受講したところ,仲間同士が支え合う活動に興味が湧きました。自分の経験をいかせるのではないかと。そして,ピアサポーターとしてW地域活動支援センター
で活動を始めました。そのことを知ったEさんが来て,「ここのスタッフとして働いてみては」と言われましたよね。あの時は正直,驚きました。ピア同士だからできていた話を仕事にすることや,利用者からスタッフに変わることによる立場の違いに戸。惑いを覚えたからです。(問題32)

 今も十分とはいえないですが,何とか仕事も続いています。入院中には今の私を想像すらできなかったです。お墓参りで母に報告もできました。Eさんもお忙しいと思いますが,ご自愛ください。またお会いできる日を楽しみにしています。
                                   かしこ

問題 31 
次のうち,この時にE精神保健福祉士が行ったアプローチとして,適切なものを1つ選びなさい。

1 課題中心アプローチ
2 ナラティブアプローチ
3 解決志向アプローチ
4 システムズアプローチ
5 ストレングスアプローチ

 

 

★解答5
★★解説★★

問題 32 
次のうち,この時点でのFさんの状態を表す用語として,適切なものを1つ選びなさい。

1 アンビバレンス
2 対処能力
3 役割葛藤
4 二重拘束
5 スティグマ

 

 

★解答3
★★解説★★

(精神保健福祉相談援助の基盤・事例問題2)

次の事例を読んで,問題33から問題35までについて答えなさい。

〔事 例〕
 Gさん(26 歳男性)は,大学生の時には相手の話した冗談を言葉どおりに受け取ってしまいトラブルに巻き込まれることもあったが,趣味の合う仲間もいて楽しく過ごすことができていた。しかし,就職してからは,元々あった音に対する敏感さに加え仕事の内容ごとに手順が異なり,戸惑うことが多くあった。
異なる指示を受け混乱していたGさんはささいなミスを続けてしまい,上司からきっい注意を受けたこと。
がきっかけで,休みがちとなった。Gさんには相談相手もおらず, 1年もしないうち,に自主退職してしまった。その後の求職活動では,書類選考や筆記試験では問題はないものの,面接になるとうまく話すことができず不採用が続いた。そのうちに,「もう何をやってもだめなんだ」と仕事探しをやめ,自宅で家族との接触も避け,自室に龍るようになっていった。
 このような本人の様子を心配した両親は,近所のXメンタルクリニックで相談していたが,ある日,両親と一緒にGさんが初めて受診した。そこで,担当となったH精神保健福祉士が,「今日はよく来てくれましたね」と本人を迎え,初回面接を行った。

(問題33)
 H精神保健福祉士は,数回の面接で,「周りがうるさいと仕事に集中できない」「パソコンでの作業は長時間集中できる」「急な予定変更には対応が難しい」「就職はすぐにしたいが,今はまだ自信がない」と話すGさんの状況から,地域若者サポートステーションの利用を勧めた。(問題34)

 その後,地域若者サポートステーションの利用を始めたGさんは,3か月たったある日の面接で,職場体験プログラムで会社訪問に行った時の様子を語りだした。「指示が具体的で手順が明確だ」「イヤホンを着けたままできるパソコン作業は,手際が良いとスタッフから褒められた」と満足気に話し,「自分にも仕事がやっていけそうだ」と嬉しそうに続けた。(問題35)

問題 33 
次の記述のうち,この時点でH精神保健福祉士がGさんに掛ける言葉として,適切なものを1つ選びなさい。

1「引き龍るようになったきっかけは何ですか」
2「利用したいと思うサービスを教えてください」
3「両親とよく話をしますか」
4「これまで受診しなかったのはどうしてですか」
5「今,家でどんな生活をしていますか」

 

 

★解答5
★★解説★★

問題 34 
次のうち,この時点でH精神保健福祉士がGさんに,地域若者サポートステーションの利用を勧めた理由として,適切なものを1つ選びなさい。

1 日常生活リズムを確立するため
2 協調性などの対人関係能力を向上させるため
3 職業適性を見極めるため
4 家族関係を改善するため
5 障害受容を深めるため

 

 

★解答3
★★解説★★

問題 35 
次のうち,この時点でのGさんの状態に関する用語として。適切なものを1つ選びなさい。

1 セルフコントロール
2 セルフエフイカシー
3 セルフスーパービジョン
4 セルフケア
5 セルフアドボカシー

 

 

★解答2
★★解説★★

【専門科目】

精神疾患とその治療(1-10)

精神保健の課題と支援(11-20)

精神保健福祉相談援助の基盤(21-35)

精神保健福祉の理論と相談援助の展開(36-60)

精神保健福祉に関する制度とサービス(61-72)

精神障害者の生活支援システム(73-80)

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