第29回介護福祉士国家試験問題解説 問題5
第29回介護福祉士国家試験問題解説
問題5
健康長寿社会に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 WHO(世界保健機関)は,健康とは病気や障害がないことであると定義している。
2 健康寿命を延ばすために,ロコモテイブシンドローム(運動器症候群)対策が重要である。
3 2010年(平成22年)時点の日本における平均寿命と健康寿命の差は,男性が約5年,女性が約8年である。
4 2014年(平成26年)時点の日本におけるがん(cancer)の部位別にみた死亡者数は,男女ともに胃がん(gastric cancer)が最も多い。
5「健康日本21(第2次)」における飲酒に関する目標には,未成年者の飲酒防止は含まれていない。
(注)「健康日本21 (第2次)」とは,「21世紀における第2次国民健康づくり運動」のことである。
◆解答解説
③ 【社会の理解】
頑張って勉強したのに、勉強したところがぜんぜん出題されなかった・・・そんな受験生さんのお声が
聞こえて来そうな科目が、【 社会の理解 】のようにおもえますが、皆さまはいかがでしたか??
『ヒント』になる選択肢が少なく、本当に、どの問題も迷いに迷う、つくりになっています。ただし、
全12問のうち、後半は、やや易しい問題も用意されていましたので、ケアレスミスをせずに、淡々と、
消去法など駆使しながら解き進めて行くのが、BESTですね。
問題5
正解は、2と、します。
さあ! 皆さま御一緒に♪♪ なーーんて、楽しい掛け声で、地域の公民館などに
集まったかたたちが、軽い体操から、次第にヘビーな運動まで、ロコモ対策として、
行なっておられるシーンをニュースなどで、ご覧になったことがおありかと思います。
【ロコモティブ・シンドローム】について
日本臨床整形外科学会HPより、一部抜粋させていただきました。 御紹介いたします。
ロコモ;運動器症候群:ロコモティブ シンドローム(locomotive syndrome)とは
「運動器の障害」により「要介護になる」リスクの高い状態になることです。
日本整形外科学会が、2007年(平成19年)に、新たに提唱しました。「ロコモ」の
提唱には、「人間は運動器に支えられて生きている。運動器の健康には、医学的評価と対策が
重要であるということを日々意識してほしい」というメッセージが込められています。
ロコモの原因
「運動器の障害」の原因には、大きく分けて、「運動器自体の疾患」と、「加齢による運動器
機能不全」があります。
1)運動器自体の疾患(筋骨格運動器系)
加齢に伴う、様々な運動器疾患。たとえば変形性関節症、骨粗鬆症に伴う円背、易骨折性、
変形性脊椎症、脊柱管狭窄症など。あるいは関節リウマチなどでは、痛み、関節可動域制限、
筋力低下、麻痺、骨折、痙性などにより、バランス能力、体力、移動能力の低下をきたします。
2)加齢による運動器機能不全
加齢により、身体機能は衰えます。筋力低下、持久力低下、反応時間延長、運動速度の低下、
巧緻性低下、深部感覚低下、バランス能力低下などがあげられます。「閉じこもり」などで、
運動不足になると、これらの「筋力」や「バランス能力の低下」などと、あいまり、「運動機能の
低下」が起こり、容易に転倒しやすくなります。
ロコモは国民病です。
変形性関節症と、骨粗鬆症に限っても、推計患者数は4700万人(男性2100万人、女性
2600万人)とされています。ロコモはまさしく国民病といってよいでしょう。吉村典子2009年
ロコモは、「ねたきり」や「要介護」の主要な原因です。
ロコモは、「メタボ」や「認知症」と並び、「健康寿命の短縮」、「ねたきりや要介護状態」の
3大要因のひとつになっています。
ご高齢の方は、これらの「加齢」や「運動不足」に伴う、「身体機能の低下」や、「運動器疾患
」による痛みや、易骨折性(軽微な外傷による骨折)など、多様な要因があいまって、いわば「
負の連鎖」により、バランス能力、体力、移動能力の低下をきたし、ついには、立って歩く、
衣服の着脱や、トイレなど、最低限の日常生活動作(ADL)さえも、自立して行えなくなり、
「健康寿命の短縮」、閉じこもり、廃用症候群や、寝たきりなどの「要介護状態」になっていきます。
メタボとロコモ
メタボ:メタボリックシンドロームは、心臓や脳血管などの「内臓の病気」で「健康寿命」が
短くなったり「要介護状態」になるのに対し、ロコモ:ロコモティブシンドロームでは、
「運動器の障害」が原因でおこります。
「ロコモ」と「メタボ」や「認知症」を、合併する方も多いという報告もあります(吉村典子
2009年)。高齢者のtotal healthの観点からは、幅広い対応策が必要です。
◆◆◆
年を取って、寝たきりなどになって、要介護となることはできるだけ避けるためにも、
これらの「健康寿命の延伸」「生活機能低下の防止」には、予防、早期発見・早期に
おける治療が、とても重要となるなのですね。
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