保健師助産師看護師国家試験制度改善検討部会 報告書

保健師助産師看護師国家試験制度改善検討部会 報告書

報告書より、保健師国家試験に関わる部分を抜き出しております。

はじめ に

保健師国家試験、助産師国家試験及び看護師国家試験(以下、「保健師助産師 看護師国家試験」という。)は、保健師助産師看護師法第17条に基づき、それ ぞれ保健師、助産師又は看護師として必要な知識及び技能を評価するものであ り、社会の変化や看護を取り巻く環境の変化に合わせ、定期的に改善を行って きている。

最近では、平成 24 年 4 月にとりまとめられた『保健師助産師看護師国家試 験制度改善検討部会報告書』(以下、「前回の報告書」という。)に基づき、非選 択式計算問題の導入、視覚素材の公募、保健師及び助産師国家試験における状 況設定問題の増問等の改善がなされたところである。

また、保健師助産師看護師国家試験出題基準についても、保健・医療・福祉 の実情など看護を取り巻く状況を踏まえて見直すこととされ、現行の出題基準 を見直す時期に来ている。

この度、保健師助産師看護師国家試験制度改善検討部会(以下、「本部会」と いう。)では、前回の報告書を踏まえて近年の保健師助産師看護師国家試験の評 価を行い、保健師助産師看護師国家試験における諸課題及び改善すべき事項に ついて検討した。議論は、ワーキンググループでの検討を含め、6回にわたっ て重ねられた。

今般、保健師助産師看護師国家試験制度の改善に関する基本的な方向性等について、意見を取りまとめたので、ここに報告する。


改善すべき事項

保健師国家試験問題について

出題内容について

保健師国家試験においては、現行の多項目選択式試験のなかで「基礎的知識を状況に適用して判断を行う能力を問う」ことに留意しながら、「人々の生活への支援を重視する看護に特有の状況の捉え方と判断プロセスを問う」工夫が必要である。

また、各職種に求められる専門性の高度化とニーズの多様化や、免許取得時に求められる実践能力を問うために各職種の特徴を反映して出題することが望ましい。

保健師国家試験について

保健師国家試験においては、健康問題の複雑化や健康格差の拡大等の 社会背景を踏まえて、地域住民や多職種・他機関と連携・協働しながら、健康課題を解決すること及び施策化することなど、保健師に求められる 役割や能力についての出題内容の充実が必要である。また、医学や公衆 衛生学の知識等を含めた公衆衛生看護活動の根拠となる知識についての 出題が必要である。さらに、産業保健や学校保健などの専門的分野にお いては、保健師免許を基礎資格として第一種衛生管理者や養護教諭二種 の各免許が取得できるため、当該業務に必要な知識や能力についても問 えるような出題内容の充実が必要である。

国家試験で問う知識の新しさについて

免許取得時に具有すべき重要な知識については、最終学年において最 新のものに更新しておく必要があると考えられ、保健師助産師看護師国 家試験においては、これらについても出題していくことが望ましい。特に、統計調査データや法律等、社会情勢を踏まえた実践活動に必要とな る知識については、最新の知識に更新しておく必要がある。ただし、ガ イドラインや診断基準などについても、各職種・領域における普及度や 周知期間を踏まえて、慎重な判断の上で出題していくことが望ましい。

状況設定問題について

状況設定問題は、出題の意図を明確にして出題する必要があるという 観点から、①経時的に変化する状況の中で展開する看護活動等を問う問 題、②看護における思考や判断プロセスを問う問題、③個人・家族・集 団・地域など、多様な対象や状況に対して展開する看護活動を問う問題、 ④これらが複合している問題などといった、出題類型を明確にして出題 する必要がある。

状況設定問題の状況として提示する情報については、免許取得時に求 められる実践能力を問うことを目指すことを踏まえると、判断や介入に 必要な情報のみならず、情報を取捨選択するということも含めて問う必 要がある。個別的状況を想定し、アセスメントを行い、介入に必要な情 報を取捨選択し、どのような状況なのか・どのように介入すべきかなど を判断する能力を問う、つまり、思考や判断プロセスを問うような問題 を積極的に出題することが望ましい。

なお、判断によって次のケアを選択するという思考のプロセスを問う 問題は、解答を連動させない連問での出題が困難な場合があり、2連問 や単問での出題などの工夫が必要である。

出題類型の整理を踏まえ、現行の2連問又は3連問の状況設定問題に 加え、長い状況文を付した単問の状況設定問題を導入し、多くの情報の 中から必要な情報を取捨選択する能力を問う問題や、根拠に基づいて状 況を判断する能力を問う問題などを積極的に出題していくことが望まし い。

具体的には、保健師国家試験では、地域診断における判断や介入の優 先度を問う問題などが適しており、地域診断に必要なグラフ化されたデ ータや表などをもとに保健師に必要な判断力を問うような出題が望まし い。助産師国家試験では、正常分娩において助産師が正常からの逸脱を 予測・判断して対応するといった実践能力を問うような臨床に則した状 況設定が望ましい。看護師国家試験では、引き続き、根拠に基づいたア セスメントや計画立案に基づく看護実践における思考や判断プロセスを 問うような出題が望ましい。


出題数について

数年間の正解率等の解答状況 や得点状況などから、信頼性と合格率の関係性や無答率等について分析 し、評価・検討したところ、各国家試験の出題数については妥当であっ た。よって、出題数については、現 行どおりとすることが適当である。

出題形式について

現行の保健師助産師看護師国家試験においては、 4 肢 A タイプ * 1 、 5 肢 A タイプ及び 5 肢 X2 タイプ *2 が用いられている。出題形式について は、一般問題と状況設定問題別に評価したところ、実施年毎の出題割合 が大きく異なることはなく、 A タイプと X2 タイプ又は4肢と5肢では 解答状況の傾向にも大きな偏りはなかった。よって、引き続き、出題の 意図や出題内容などに適した肢数や形式で出題していくことが必要であ る。

なお、非選択式の計算問題については、正解率は低いものの、識別指 数は高い傾向にあるため、状況設定問題に組み込むなどの工夫によって 引き続き積極的に出題することが望ましい。特に、保健師国家試験にお いては活動の場に則した実践能力を問うような出題を踏まえると、非選 択式計算問題の増問も含めて、更なる出題について工夫することが望ま しい。

評価領域分類( Taxonomy )について

評価領域分類( Taxonomy )については、出題の意図や出題内容など に適した評価領域分類で出題することを前提に、必修問題では評価領域 分類Ⅰ型(知識の想起・推定)を、状況設定問題では評価領域分類Ⅱ型 (解釈)及びⅢ型(問題解決)を中心として出題することが望ましいと されている。

必修問題については、これまでの出題状況は概ね良好であり、引き続 き、評価領域分類Ⅰ型で出題していく。その他一般問題及び状況設定問 題については、教育で培われた状況判断能力や実践能力を問うために、 評価領域分類Ⅰ型ではなく、Ⅱ型やⅢ型での出題割合を上げるような改 善が必要である。具体的には、視覚素材の活用や長い状況文を付した状 況設定問題の導入などによって、知識の単純想起型の出題をできるだけ 減らしていく。特に、保健師国家試験においては、状況設定問題も含め て知識の単純想起型の出題が多く、評価領域分類Ⅱ型やⅢ型の出題を増 やす改善が必要である。

視覚素材について

視覚素材については、所見や状態、医療機器や物品など、そのものに ついて直接的かつ詳細には文章で問うことが難しい問題や、処置及び看 護技術など写真を用いることでより具体的に問うことができる問題など においては、視覚素材が有効に活用され、正確に問うことができている。 より臨床に則した出題のために、写真に限らずカラーによる出題やイラ スト・図表等を積極的に活用することが望ましい。

例えば、保健師及び看護師国家試験では地図、住宅見取り図や図表等 のデータをもとに情報を理解・解釈して必要な介入を判断するような問 題を導入すること、助産師国家試験では超音波画像や胎児心拍数陣痛図 等の診断に関する問題や、看護師国家試験では画像診断の活用に関する 問題などを引き続き出題することによって、より状況判断能力や実践能 力を問うよう工夫することが望ましい。

なお、視覚素材の公募についても積極的に働きかける必要がある。


合格基準について

保健師助産師看護師国家試験の合格基準については、経年的な合格状況や得点状況を踏まえると現状維持が望ましい。

保健師国家試験問題の公募について

保健師助産師看護師国家試験問題の公募については、前回の報告書を受けて、平成25年度からは試験問題の公募システムを改修して視覚素材のみの登録を可能とし、平成26年度からは学校養成所や関係団体のみならず、都道府県を通して新人看護職員研修を実施している施設へ公募依頼の対象を拡大するなど、改善に向けた対応がされてきた。

しかしながら、公募問題の登録数が少ないこれまでの状況を踏まえると、作成された試験問題の公募のみではなく、視覚素材等の公募の周知・促進や、状況設定問題のもととなる情報(匿名化された事例やデータ、状況など)の公募の導入なども必要である。よって、現行の試験問題の公募システムについては、問題作成の手引きの改訂等の運用改善や公募システムの周知に努めつつ、周知の際に公募の対象となる情報を具体化して提示することなどにより、応募を促進していくことが望ましい。

出題基準について

保健師助産師看護師国家試験出題基準平成26年版における改善事項『保健師助産師看護師国家試験出題基準平成26年版』については、出題基準項目 4小項目が「中項目に関する内容をわかりやすくするために示したキーワードである」ことを踏まえて、「出題範囲となる事項である」中項目の記載の抽象度を工夫するとともに、膨大な知識の中でどの範囲を国家試験で問うのかということを明確にするような中項目の記載の表現の工夫が必要である。

改定された出題基準の適用時期について

改定された出題基準の適用時期については、出題基準の改定に関する今後 の検討及び周知期間を勘案し、平成 30 年の第 104 回保健師国家試験から適用することが 望ましい。

その他

保健師助産師看護師国家試験の実施回数については、現状の受験者数や試験問題の質の担保等を踏まえると現行どおりが望ましい。ただし、コンピュータを活用した試験の導入に関しては将来的に検討していく必要があり、国家試験の年間の実施回数等については、これと併せて検討すべき課題である。

また、平成23年の東日本大震災及び平成26年の雪害による第103回看護師国家試験の追加試験の実施などを踏まえて、試験当日に災害等によって試験時間の変更等が生じる場合や試験中に災害等が発生した場合などについては、監督者も含めた各試験会場への周知及び厚生労働省ホームページでの案内と受験者留意事項にその旨を記載して周知が図られている。受験者の安全を第一とした保健師助産師看護師国家試験の実施に向けた危機管理体制については、対応を継続することが必要である。

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