第30回介護福祉士試験問題 解答解説69-76 発達と老化の理解
第30回介護福祉士国家試験問題解答解説
発達と老化の理解
<領域:こころとからだのしくみ>
発達と老化の理解
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ここからは、『午後の部』の解答番号、解説をお届けさせていただきます。
休憩時間も変則なうえに、土地勘のない場所での移動、地域によっては、大雪で、
御昼ごはん確保は、受験生さんにとってたいへんだったとおもいます。
食欲がなくなって・・・ こんなかたも、きっと、多かったかもしれないですね。
真冬の試験ですから、からだを冷やさないように、温かい飲み物だけでもくちにして、
午後の部に向けて、どなたも、エネルギーチャージを!!
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⑧ 【発達と老化の理解】
皆さま、『午前の部』、本当に御疲れ様でした!! ここからは、いよいよ後半戦ですね。
午後の部、最大の『関所』とおもわれるのが、【発達と老化の理解】ではないでしょうか。
1問目から、いきなりの難問登場で、余計に難しく感じられたかもしれないですね。
ただし! どんな難問も、その逆の、基本中の基本問題も、配点は同じく、1点です。
手ごわい科目であっても、【決めたとおりの時間配分】、【決めたとおりのペース配分】で解答して、基本問題へと進みましょう。
ほとんどの受験生さんが、得点できない問題って、かならず試験には用意されています。
『難問さん、こんにちは。』
『難問さん、さようなら。』
あえての、塩対応でまいりましょう。
問題69
生理的老化の学説に関する次の記述のうち、適切なものを1つ選びなさい。
1 エラー破局説では、加齢によって臓器や器官が機能低下することで老化が生じると考える。
2 消耗説では、活性酸素による細胞の損傷で老化が生じると考える。
3 フリーラジカル説では、加齢による臓器や器官の萎縮や縮小に対して、それを補う再生機能が低下することで老化が生じると考える。
4 機能衰退説では、細胞内のDNAが損傷することで老化が生じると考える。
5 老化プログラム説では、人の細胞分裂の回数があらかじめ決まっていることで老化が生じると考える。
解答問題69
正解は、 5 といたします
それぞれの、老化の理論をわかりやすく御紹介してみましょう。
◆◆ 設問1の、エラー破局説とは・・・
細胞内の遺伝子に突然変異が不規則に起こり、それが蓄積していくことによって
細胞の分裂能が消失し、細胞の寿命が尽きるという説ですね。
◆◆ 設問2の、消耗説とは・・・
本来、細胞が生きていくために必要なものが、長年にわたって徐々に消耗し、量的
あるいは質的にある一定の限度を下回ったところで、細胞が機能を失ったり死んだり
することが細胞の老化であり、これによって個体の生命が維持できなくなるという
説とされます。
◆◆ 設問3の、フリーラジカル説とは・・・
エラー破局説の1つに、フリーラジカル(free radical)によって遺伝子に変化が起こる
というラジカル説(radical theory)があります。
ラジカル(フリーラジカル)は一般に、分子または原子団に不対電子を持つ化学種を指し、
その代表に活性酸素がある。ラジカルによってDNA(遺伝子)の障害が起こり、それが蓄積
されることによって細胞の機能障害が起こってくる。やがて、機能障害が蓄積し、細胞の
老化、ついには細胞死がもたらされる。細胞死は、個体としての老化につながると考え
られています。
◆◆ 設問4の、機能衰退説とは・・・
加齢によって、臓器や器官が機能低下することにより、老化が生じるとする説ですね。
ちなみに、
DNAと細胞再生の過程でおこる失策(エラー)の積み重ねが老化を招くというのが
エラー蓄積説です。
設問1、2、3、4は、 どれも、ぜつみょう・ひっかけでした。
問題70
キューブラー・ロス(Kubler-Ross、E.)が提唱した死の受容過程における「取り引き」に該当するものとして、適切なものを1つ選びなさい。
1 死ぬのがなぜ自分なのかと怒る。
2 自分が死ぬことはないと思う。
3 つらい治療を我慢して受けるので助けてほしいと願う。
4 安らかな気持ちで死を受け入れる。
5 もう助からないと思って絶望する。
解答問題70
正解は、3 といたします
精神科医の、キューブラー・ロスによる、5つの段階からなる、死の受容課程。
ロスは、1926年に生まれ、2004年に没した女性ですね。
『終末期医療』を切り開いた人物として著名です。現在でも、多くの医学部での必修科目として、終末期医療が学ばれています。
1969年に、彼女によって出版された『死ぬ瞬間』は、世界的なベストセラーとなりました。
御時間があるときに、よろしかったら・・・
◆◆ 第1 段階 否認と孤立(DENIAL & ISOLATION)
自らの命が危機にあり、余命があとわずかである事実に衝撃を受け、それを頭では理解
しようとするが、感情的にその事実を否認(逃避)している段階。
「なにかの間違いだ」というような反論をするものの、それが否定しきれない事実である
ことは知っている。
周囲は、この事実にもとづいて考えを進めているため、そうした周囲から距離を取り、
孤立することになる。
◆◆ 第2 段階 怒り (ANGER)
自分が死ぬという事実は認識できた。しかし「どうして悪いことをしていない自分がこんな
ことになるのか」「もっと悪いことをしている人間がいるじゃないか」というような怒りに
とらわれる段階。
ケースによっては、看護師などに対して「あなたはいいね、まだまだ生きられて」といった
皮肉のような発言をすることもある。根底にはやはり「なぜ、自分が」という、死に選ばれた
ことへの強い反発がある。
◆◆ 第3 段階 取り引き( BARGAINING)
信仰心がなくても、神や仏にすがり、死を遅らせてほしいと願う段階。
死ぬことはわかったが、もう少しまってほしい。財産を寄付したり、これまでの行為も
改めるといった「取り引き」をしようとする。なんとか、死を回避することができないか
模索する。
はじめは「死を遠ざけてほしい」という願いが「◯◯をするので、あと少しだけ」という
具合に、取り引きの条件が自分に不都合なほうに変化することもある。
◆◆ 第4 段階 抑うつ(DEPRESSION)
「ああ、これだけ頼んでもダメか」「神も仏もないのか」というように、自分なりに
神や仏に祈っても、死の回避ができないことを悟る段階。
悲観と絶望に打ちひしがれ、憂うつな気分になる(正確には、抑うつと悲観は異なる概念で
ある)。
頭で理解していた死が、感情的にも理解できるようになる。神や仏の否定になるケースもあり、
虚無感にとらわれることもある。
◆◆ 第5
段階 受容(ACCEPTANCE)
それまでは、死を拒絶し、なんとか回避しようとしていたが、生命が死んでいくことは
自然なことだという気持ちになる。
個人差もあるが、それぞれに生命観や宇宙観のようなものを形成し、自分を、その中の一部と
して位置づけることもある。自分の人生の終わりを、静かにみつめることができるようになり、
心に平穏が訪れる。
ここで、『発達と老化の理解』の出題基準における、中項目と小項目をおさらいして
おきましょう。
◆◆印は、中項目を、 ◇◇印は、小項目をしめします。(中項目のみもあります)
◆◆ 人間の成長と発達
◇◇ 発達の定義
◇◇ 発達段階
◇◇ 発達課題
◇◇ その他
◆◆ 老年期の定義(WHO、老人福祉法、高齢者の医療の確保に関する法律の高齢者
医療制度)
◆◆ 老年期の発達課題
◇◇ 人格と尊厳、老いの価値、喪失体験、セクシュアリティ、その他
◆◆ 老化に伴う心身の変化の特徴
◇◇ 防衛反応(反射神経)の変化
◇◇ 回復力(抵抗力)の変化
◇◇ 適応力(順応力)の変化
◆◆ 老化に伴う心身の機能の変化と日常生活への影響
◇◇ 身体的機能の変化と日常生活への影響
◇◇ 知的・認知機能の変化と日常生活への影響
◇◇ 精神的機能の変化と日常生活への影響
◇◇ その他
◆◆ 高齢者の心理
◇◇ 老化を受けとめる高齢者の気持ち
◇◇ 社会や家庭での役割を失う高齢者の気持ち
◇◇ 障害を受けとめる高齢者の気持ち
◇◇ 友人との別れを受けとめる高齢者の気持ち
◇◇ 経済的不安を抱える高齢者の気持ち
◇◇ その他
◆◆ 高齢者の疾病と生活上の留意点
◇◇ 高齢者の症状の現れかたの特徴
◇◇ 高齢者の体の不調の訴え(痛み、かゆみ、不眠、冷え、その他)
◆◆ 高齢者に多い病気とその日常生活上の留意点
◆◆ 保健医療職との連携
過去問題を5年ぐらい、さかのぼって、それぞれの中項目、小項目のどのあたりに
該当するかをしらべてみると、学習のヒント。得点のヒントがみつかりそうですね。
問題71
老化に伴う身体の変化に関する次の記述のうち、適切なものを1つ選びなさい。
1 骨密度が上昇する。
2 唾液の分泌量が増加する。
3 肺活量が増加する。
4 貧血になりやすい。
5 皮膚の表面が湿潤化する。
解答問題71
正解は、4 といたします
ね。
きほんもんだいが
まっててくれました。
問題72
老化に伴う感覚や知覚の変化に関する次の記述のうち、適切なものを1つ選びなさい。
1 「1時(いちじ)」と「7時(しちじ)」のような似た音を聞き取ることが難しくなる。
2 暗さに目が慣れる能力よりも、まぶしさに目が慣れる能力が低下する。
3 味覚の低下は個人差が少ない。
4 高音域よりも、低音域の音が聞こえにくくなる。
5 通常の明るさよりも、薄暗い方がよく物が見える。
解答問題72
正解は、1 といたします
ここは、どなたも落ち着いて、御高齢の利用者さんのケアのシーンを思い出し、
正答を導いてくださったとおもいます。
ちなみに、
高齢者の事故は、室内におけるものが圧倒的多数だそうです。
心身の変化を理解しての、安全で快適な環境整備がのぞまれますね。
問題73
Aさん(86歳、男性)は、介護老人福祉施設に入所している。2か月前に転倒骨折で入院し、歩行訓練を経て施設に戻ってきたばかりである。施設では、転倒の危険性に配慮して、車いすを使用している。Aさんが車いすから立ち上がろうとするたびに、介護福祉職が、「危ないから座っていてくださいね」と声をかけるようにした。その結果、Aさんは、入院以前よりも口数が少なくなり、元気がなくなった。Aさんは、家族や施設の職員、他の入所者との関係は良好である。
Aさんの現在の心理的状態をマズロー(Maslow、A.H.)の欲求階層説に基づいて説明した次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 生理的欲求が充足されていない状態である。
2 安全欲求が充足されていない状態である。
3 承認欲求が充足されていない状態である。
4 所属・愛情欲求が充足されていない状態である。
5 自己実現欲求が充足されている状態である。
解答問題73
正解は、3 といたします
ここで。
むげんるーぷに。
おちいった。
なんて、受験生さん、御気持ちすっごく、わかります。
勉強したのに。
勉強したのに。
試験になると、急に迷いだすことって、あるんですよね。
マズローが唱えた、欲求階層説は以下のとおりです。
① 生理的欲求
② 安全と安定の欲求
③ 所属と愛情の欲求
④ 承認の欲求
⑤ 自己実現の欲求
①から、④までは、欠乏欲求、⑤は、成長欲求と されます。
このうち、④の です。『承認の欲求』とは以下のような意味をもちます。
承認(尊重)の欲求 (ESTEEM)とは、自分が集団から価値ある存在と認められ、
尊重されることを求める欲求
尊重のレベルには二つあり、低いレベルの尊重欲求は、他者からの尊敬、地位への渇望、
名声、利権、注目などを得ることによって満たすことができるとされます。
マズローは、この低い尊重のレベルにとどまり続けることは危険だとしています。
高いレベルの尊重欲求は、自己尊重感、技術や能力の習得、自己信頼感、自立性などを
得ることで満たされ、他人からの評価よりも、自分自身の評価が重視されます。
この欲求が妨害されると、劣等感や無力感などの感情が生じることになるのですね。
問題74
嚥下障害に関する次の記述のうち、適切なものを1つ選びなさい。
1 歩く時に胸が痛くなる。
2 食事の時にむせる。
3 食後に上腹部痛が生じる。
4 立ち上がった時に目の前が暗くなる。
5 咳をした時に痰に血が混じる。
解答問題74
正解は、2 といたします
ここは、どなたも、貴重な追加点を、あげていただけたとおもいます。
問題75
パーキンソン病(Parkinsondisease)の症状として、適切なものを1つ選びなさい。
1 後屈した姿勢
2 大股な歩行
3 血圧の上昇
4 頻回な下痢
5 無表情
解答問題75
正解は、5 といたします
パーキンソン病では、主に、
手足がふるえる(振戦)、動きが遅くなる(無動)、筋肉が硬くなる(固縮)、体のバランスが
悪くなる(姿勢反射障害)、といった症状がみられます。
これらによって、顔の表情の乏しさ、小声、小書字、屈曲姿勢、小股・突進歩行など、
いわゆるパーキンソン症状といわれる、運動症状が生じます。
また、パーキンソン病では、運動症状以外にも、便秘や頻尿などの自律神経の症状、
不眠などの睡眠障害、うつ症状などの精神症状、認知機能障害などがみられることがわかって
います。これらを非運動症状と呼びます。
うつ症状は患者さんの約半数にその傾向があるといわれていて、患者さん自身や家族の方も
気づかないことの多い症状です。認知症は病気が進行すると約2割の方にみられます。
非運動症状は、患者さんやご家族と医師との間に、意志の疎通がよくとれていて、はじめて
気づかれる症状とされます。
特定疾患の1つでもあり、特定疾病の1つでもある、パーキンソン病。
介護保険の特定疾病に指定されているということから、40代でも発症して、進行すると
介護が必要となることが想像できますね。
疾病の原因、症状(たくさんあります)、治療法、日常生活上の注意事項、適切なケア
などなど、しっかり理解しておきたい疾病です。
問題76
Bさん(75歳、男性)は半年前から尿が出にくくなり、時間がかかるようになった。2日前から風邪気味で、昨夜、飲酒後に市販の風邪薬を服用したところ尿が出なくなった。そのため、今朝になって病院を受診して導尿してもらった。Bさんの日常生活上の注意点として、適切なものを1つ選びなさい。
1 下半身の保温を心がける。
2 毎日、飲酒をする。
3 いすに座る時間を長くする。
4 排尿の回数を減らす。
5 飲水を控えるようにする。
解答問題76
正解は、1 といたします
男性では、尿道の奥の部分は前立腺に囲まれています。前立腺は精液の一部を作ります。
通常は栗の実ほどの大きさですが、年齢が高くなると前立腺が大きくなり、中を通っている
尿道を押しつぶしたりして、尿の出が悪くなります。
これが『前立腺肥大症』ですね。
風邪薬の成分のなかに、膀胱の機能を低下させるものがあります。普通の人が飲んでも
問題はないのですが、前立腺肥大症があると風邪薬を飲んだあとで、尿の出が悪くなり、
ひどい場合は、長時間こころみても、尿が出せなくなることもあります。
下半身の冷えは、血液循環が不活発になり、前立腺の充血につながります。
下半身は冷やさないよう、保温を心がけることも、とてもたいせつです。