第30回介護福祉士試験問題 解答解説27-34 コミュニケーション技術
第30回介護福祉士国家試験問題解答解説
コミュニケーション技術
問題27
受容の説明に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 価値観を尊重する。
2 問題行動を否定する。
3 言い分に同調する。
4 感情を分析する。
5 否定的感情を抑圧する。
★★
解答 1
解説
⑤ 【コミュニケーション技術】
さあ! 皆さま、御待たせいたしました!!
いよいよ、皆さまの真骨頂である、コミュニケーション関連の問題が登場ですね。
ここで問われる、コミュニケーションとは、単なる伝達ではもちろんありません。
本来、『コミュニケーション』とは、お互いに理解を深め、わかりあう・・・
そんな機能をも、もつからですよね。
利用者さんや、そのご家族と、介護におけるチームメンバーと・・・ 学習も、それぞれの
シチュエーションを想像しながらすすめると、いっそう効果があがりそうなのが、この
科目とおもわれます。
試験においても、以下のように、大項目、小項目が、かかげられています。
(中項目は、割愛しております。)
◆◆◆ 介護におけるコミュニケーションの基本
◆◆◆ 介護場面における利用者・家族とのコミュニケーション
◇◇◇ 話を聴く技法
◇◇◇ 利用者の感情表現を察する技法(気づき、洞察力、その他)
◇◇◇ 納得と同意を得る技法
◇◇◇ 相談、助言、指導
◇◇◇ 意欲を引き出す技法
◇◇◇ 利用者本人と家族の意向の調整を図る技法
◇◇◇ 感覚機能が低下している人とのコミュニケーション
◇◇◇ 運動機能が低下している人とのコミュニケーション
◇◇◇ 認知・知覚機能が低下している人とのコミュニケーション
◇◇◇ その他
◆◆◆ 介護におけるチームのコミュニケーション
◇◇◇ 介護における記録の意義、目的
◇◇◇ 介護に関する記録の種類
◇◇◇ 記録の方法、留意点
◇◇◇ 記録の管理
◇◇◇ 介護記録の共有化
◇◇◇ 情報通信技術(ICT)を活用した記録の意義、活用の留意点
◇◇◇ 介護記録における個人情報保護
◇◇◇ 介護記録の活用
◇◇◇ その他
◇◇◇ 報告の意義、目的
◇◇◇ 報告・連絡・相談の方法、留意事項
◇◇◇ 会議の意義、目的
◇◇◇ 会議の種類
◇◇◇ 会議の方法、留意点
小項目をながめていると、なんとなーく、学習のヒントがみえてきそうですね。
小項目と、過去問題をつきあわせてみると、出題の傾向がわかってくることが
多いので、おすすめの勉強法の1つです。
問題27
正解は、1 といたします
そのひとの、あるがままを うけいれること・・・
先入観も、印象などに基く判断も、不要。
感情的なこだわりもいりません。
皆さまは、どんなふうに、『受容』を 定義なさいますか??
★★
問題28
コミュニケーションがより円滑になるように、開かれた質問をする目的として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 初対面の利用者と会話を始めるときに緊張をほぐすきっかけをつくる。
2 話す気分になれなくて口数の少ない利用者と会話を続ける。
3 漠然としていて伝わらない利用者の考えを明確にする。
4 重度の認知症(dementia)でコミュニケーション能力が低下している利用者から
情報を得る。
5 利用者の繰り返す同じ話を一旦止める。
★★
解答 3
解説
問題28
正解は、3 といたします
コミュニケーション・技・術 とありますことからも、
皆さまは介護のプロフェッショナルとして、その技術を駆使なさる場面が、多々
おありだとおもいます。
ときに、オープンな質問で。(開かれた質問)
ときに、クローズな質問で。(閉じられた質問)
コミュニケーションをはかることになるのですね。
どのように、使い分けてゆくのでしょう??
開かれた質問では・・・
★★★ 特徴として以下が
答えが決まっていない場合には、考えながら答えることが可能であると
されます。
★★★ 効果として以下が
思考や会話が深まる、本当の気持ちに気づくなどがあげられます。
反対に、
閉じられた質問では・・・
★★★ 特徴として以下が
『はい』や、『いいえ』などのように、あるいは、『1です』などと、
答え方が、決まっています。
★★★ 効果として以下が
会話が苦手であったり、困難なクライエントにも有効である。
簡単な世間ばなしが行なえることから、おたがいの緊張をほぐす効果も
あるとされます。
もう、正解は、みつかりましたね。
★★
問題29
Kさん(75歳、女性)は、脳梗塞(cerebral infarction)を発症して、1か月間入院した後、介護老人保健施設に入所した。Kさんは重度の運動性失語症(motor
aphasia)のため、自分から話すことはなかった。
入所して2か月ほど過ぎた頃、Kさんは、少しづつ言葉が話せるようになった。
ある日の午後2時頃、介護福祉職に向かって、「お茶、いや、違う、お、お、違う、
ええと」と話し始めたが、伝えたい言葉が見つからないようで、もどかしそうで
あった。
この時のKさんへの介護福祉職の言葉かけとして、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 「何を言いたいのでしょうか」
2 「もう1回繰り返してください」
3 「おやつの時間まで待ってください」
4 「何か飲みたいのですね。お水ですか?」
5 「言葉が出てきてよかったですね」
★★
解答 4
解説
問題29
正解は、4 といたします
脳梗塞による、重度の運動性失語症を発症したけれど、すこしづつ、
言葉が話せるようになった、Kさん。
話しはじめたけれど、伝えたい言葉がみつからず、もどかしそうな様子・・・
皆さまなら、どんな言葉を、Kさんにおかけになるでしょう??
話す能力に、もっとも障害が大きいとされるのが、運動性失語症ですね。
症状の特徴として、自発話表出困難、復唱困難があります。
ただし、言語の理解は、比較的保たれているともされます。
ケースバイケースではありますが、
意思の確認などには、『はい』や、『いいえ』で、答えられる閉じられた質問も
有効とされ、絵や、写真などの、視覚化された情報の活用も用いることが
すすめられます。
ということは・・・
すでに、発しておられる、『お茶、お、お、ええと・・・・』などの言葉をすくいあげ
Kさんに、言葉を返したいところです。
よって、設問1、設問2、設問3は、ここでは、却下に。
設問5は、タイミング的に不適切ということで、ここでは却下しました。
ここで、コミュニケーション技術に関する、資料をすこし御紹介してみましょう。
コミュニケーションに障害がある場合に関する、学習の際に御活用ください。
★★★
利用者さんに、コミュニケーションの障害がある場合として、おおおきく、2つに
類別されます。
① 生活環境に問題があり、情報を十分に教授できない場合
② 利用者さん自身のコミュニケーション能力や、関係する機能が、なんらかの原因で
障害されており、コミュニケーションが成立しない場合
そして、さらにこまかく・・・
★★★
『非脳損傷型コミュニケーション障害』 として
脳そのものには、障害はなく、聴力や、視力などの感覚器官や、発声・発語器官に障害が
あるため、コミュニケーションに障害があらわれているものがあります。
★★★
『先天性脳損傷型コミュニケーション障害』 として
発達障害や、知的障害などもふくまれ、生まれたときからの障害によるものがあります。
★★★
『後天性脳損傷型コミュニケーション障害』 として
失語症や、認知症などがふくまれ、後天的な脳の疾患や、脳の外傷などにより、
高次脳機能障害が合併することにより、生じたコミュニケーション障害があります。
当然に、配慮すべきポイントが異なってきます。
◆◆◆
非脳損傷型コミュニケーション障害に対する、配慮すべきポイントとして
① 脳は、正常に機能しています。
残存する、コミュニケーション機能を活用することがたいせつとなります。
50音表などの、ツールを活用するなど、意思疎通への工夫をこころがけます。
② 低下がみられる機能に対しては、その改善のために、補聴器や、めがねなどの
補助具を活用することも、有効です。
リハビリテーションや適切な訓練などの活用も、有効とされます。
③ 残念ながら失ってしまっている機能もあります。精神的な支援も必要とされます。
◆◆◆
『先天性脳損傷型コミュニケーション障害』に対する、配慮すべきポイントとして
① 健常者側の押し付けは禁物です。一方的に、健常者の考える方法を強要せず、
本人が、すでに習得している生活技術や、コミュニケーションの方法を活用します。
② 本人の、感情表現などの手段を、観察することにより、対応の手段に生かしてゆき
ます。
③ 不安を与えてしまう言動は避けます。ボディタッチなども、じゅうぶんな配慮を
もって行います。
④ 本人が発している情報を、無理に制止することも、できるだけ避けます。
しぐさ、行動などは、情報発信として受け止めてゆくと同時に、本人の安全や
健康面などへの配慮もおこないます。
★★
問題30
抑うつ状態(depressive state)の利用者への介護福祉職の対応として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 元気を出すように言う。
2 沈黙している理由を問いただす。
3 会話を促す。
4 気晴らしに散歩に誘う。
5 見守っていることを伝える。
★★
解答 5
解説
問題30
正解は、5 といたします
類似問題が過去の本試験においても、登場していますね。
抑うつ状態にある利用者さんにとって、安易な励ましがNGであることは、
皆さまのほうが、よく御存知だとおもいます。
会話の無理強いも、NGですよね。
このあたりから、設問1、2、3は、却下に。
気分転換を強制したりすることもまた、抑うつ状態にある人には、避ける
べきこととなります。
あせらずに、支持的にかかわってゆくこと。
相手にも、変化を急がせないこと。
受容的・共感的な対応をこころがけ、利用者さんが、安心できる環境づくりを
することが、たいせつとされます。
ここでは、王道の選択肢として、設問5を 正解といたしました。
★★
問題31
Lさん(75歳、女性)は、介護老人福祉施設に入所している。中等度のアルツハイマー型認知症(dementia of the Alzheimer’s type)と診断されて、担当の<
介護福祉職(男性)を、既に亡くなった自分の夫であると認識している。何か心配なことがあると、M介護福祉職を探しだして「お父さん聞いて・・・」と不安そうな表情で話してくる。
不安そうな表情で話すLさんへの、M介護福祉職の対応として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 女性職員に対応してもらうように伝える。
2 夫は既に亡くなっていることを伝える。
3 Lさんの話しに耳を傾ける。
4 おしぼり畳みの軽作業を依頼する。
5 忙しくて手が離せないことを伝える。
★★
解答 3
解説
問題31
正解は、3 といたします
解説不要ですよね!!
★★
問題32
Aさん(97歳、女性)は、介護老人福祉施設に入所している。最近、衰弱が進んで水も飲めなくなり、「もう、逝ってもいいんだけどね」とつぶやくことが増えた。
ある日、夜勤の介護福祉職がAさんの様子を確認しようとベッドに近づくと、Aさんが目を開けて、「お迎えはまだかしらね」と穏やかな顔で言った。
Aさんの発言に対する介護福祉職の対応として、最も適切なものを1つ選びなさ
い。
1 何も考えずに早く寝た方がいいと就寝を促す。
2 Aさんの手を握り、ゆっくりさする。
3 そのような言葉を言ってはいけないと伝える。
4 明日、家族に連絡して来てもらうことを伝える。
5 いつものことだと思って、声をかけずにそのまま部屋を出る。
★★
解答 2
解説
★★
問題32
正解は、2 といたします
コミュニケーションは、情報の伝達という、機能だけではなく、
人が互いに理解を深めて、わかりあうという機能もあわせもっています。
利用者さんの身体に、やさしく触れることは、共感や、いたわりの気持ちを
表現できるとされます。
設定は、夜間の見回り中でのできごとですから、同室者がおられる可能性も。
室内で、静かにコミュニケーションをはかる必要もありますよね。
設問2の対応が、BESTとかんがえます。
皆さまなら、どのような対応をまさいますか??
問題33
介護業務の事故報告に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 口頭での報告は、結論を述べてから事故に至る経過を説明する。
2 事故報告書は、管理者以外は閲覧できないように保管する。
3 軽微な事故の場合は、後日報告する。
4 介護福祉職としての判断を除外して報告する。
5 記録した内容は、口頭での報告が不要である。
★★
解答 1
解説
問題33
正解は、1 といたします
どなたも、御仕事の場において、『報告』をなさっておられることとおもいます。
ただし、問題33で問われているのは、『事故報告』ですので、申し送り等の業務
報告とは、若干ことなってきますよね。
介護保険事業者として、事故報告書を保険者に提出するケースも考えられます。
スピーディー、かつ、正確な報告が必要なのは、いうまでもありませんので
設問3、5は、却下に。
事故への適切な対応や、再発防止のためには、スタッフ間での情報共有が
必須ですから、設問2も、却下に。
また、報告においては、客観的事実にくわえて、
『そのことに対する自分の判断』も含めますので、設問4も、却下しました。
そろそろ、前半戦の折り返しに近づいてきました!!
たいへん、問題数が多い試験です。
1問 約80秒で、時間通りに解きすすめ、難問君は、見直し時間に再トライ!
しましょう。
皆さまなら、ぜったい、だいじょうぶです。
★★
問題34
ブレインストーミング(brainstorming)の原則に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 奇抜な意見を除いて、自由に意見を出す。
2 他人の意見が正しいかどうかをその場で判断する。
3 意見の質よりも、数多くの意見を出すことに価値を置く。
4 他人の意見を参考にしてはいけない。
5 他人の意見を自由に批判する。
★★
解答 3
解説
★★
問題34
正解は、3 といたします。
は?
ぶれいんすとーみんぐ??
なんだか、めまいがしてきそうなお名前ですが、BRAINSTORMINGとは
数名毎のチーム内で、1つのテーマに対しお互いに意見を出し合う事で沢山の
アイディアを生産し、問題の解決に結び付ける創造性開発技法の事をいいます。
1938年(昭和13年)当時に、米国広告代理店BBDO社で、副社長をしていた
A・F・オズボーン氏が考案した技法で、自由奔放な発想からお互いのブレーン(頭脳)を
刺激し合う事で、更に創造的なアイディアを生み出す事が出来るという考え方が基本と
なっています。
「三人寄れば文殊の知恵」という諺がありますが、少人数チームを幾つか作りお互いに
ディスカッションする事で、問題を明確にし且つ多数の意見を出し合う中で生まれる
アイディアを基に、リスク要因を明確にする事で打開策を打ち出す技法です。
お互いの意見を批判して潰すのではなく、小さなアイディアも含めて少しでも多くの
意見を出し合う事により内容を分析・整理し展開や解決へと結び付けるという考え方は
チームワークを固めお互いの意義を高めるためにも重要です。
互いの意見を尊重しつつ複数の意見をディスカッションする手法ですので、実際の業務に
おいて意思の疎通がうまくいかない場合など是非取り入れると良い技法といえますね。
ブレインストーミングには、以下のような『4つの原則』があります。
① 判断・結論を出さない(結論厳禁)
② 粗野な考えを歓迎する(自由奔放)
③ 量を重視する(質より量)
④ アイディアを結合し発展させる(結合改善)
おもしろそうですね。
こんな会議なら、大歓迎かも。
★★