精神保健福祉相談援助の基盤(21-35)第20回精神保健福祉士国家試験問題解説
精神保健福祉相談援助の基盤(21-35)第20回精神保健福祉士国家試験問題解説
精神保健福祉相談援助の基盤
問題21
次の記述のうち、精神保健福祉士法に規定されている精神保健福祉士の業務に関するものとして、正しいものを2つ選びなさい。
1 助言、指示、日常生活への適応のために必要な訓練その他の援助を行う。
2 資質向上のため、厚生労働省令で定められている研修の受講義務がある。
3 職を辞した後も、5年の秘密保持義務がある。
4 常にその者の立場に立って、誠実にその業務を行わなければならない。
5 精神保健福祉士の信用を傷つけるような行為をしてはならない。
問題22
次の記述のうち、国際ソーシャルワーカー連盟(IFSW)の倫理綱領の「倫理基準」に関するものとして、正しいものを1つ選びなさい。
1 専門職としての倫理責任として、秘密の保持が示されている。
2 利用者に対する倫理責任として、説明責任が示されている。
3 実践現場における倫理責任として、専門職の擁護が示されている。
4 社会に対する倫理責任として、業務改善の推進が示されている。
5 専門職としての倫理責任として、社会への働きかけが示されている。
問題23
次のうち、最も早く設立された社会福祉に関する職能団体として、正しいものを1つ選びなさい。
1 日本医療社会事業協会(現公益社団法人日本医療社会福祉協会)
2 日本介護福祉土会(現公益社団法人日本介護福祉士会)
3 日本社会福祉上会(現公益社団法人日本社会福祉士会]
4 日本精神医学ソーシャル・ワーカー協会(現公益社団法人日本精神保健福祉士協会)
5 日本ソーシャルワーカー協会(現特定非営利活動法人日本ソーシャルワーカー協会)
問題24
次の記述のうち、ソーシャルワークにおけるストレングスの説明として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 年齢や障害の有無などにかかわらず、どの人にとっても当たり前の生活を実現できるよう、成熟した社会をつくることである。
2 主体性・連帯性・無償性に基づき、一人一人を大切な存在として認め合う社会をつくるために自ら進んで行う行為を支えることである。
3 その人の問題に焦点を当てるのではなく、その人が本来持っている強さに着目し、それを引き出しいかしていくことである。
4 精神障害に対する誤解や偏見、差別に対して正しい知識を提供することで、適切な理解や態度、行動に変えていくことである。
5 人とその環境との関係に焦点を当て、環境や自分の生活をコントロールする力を高め、自ら主体的にその状況に働き掛け改善することである。
問題25
次の記述のうち、ソーシャルワーク理論とその代表的な人物として、正しいものを1つ選びなさい。
1 ホリス(Hollis、F.)は、人間に共通の欲求充足を権利として認めることを説いた。
2 マイヤー(Meyer、C.H.)は、人と状況の両者の相互作用を重要であるとして、状況の中にある人間を中心概念として位置づけた。
3 トール(Towle.C.)は、機関には、特定の社会サービスを実施する特定の機能があり、それを手段として用いることがソーシャルワーカーの独自性であるとした。
4 ジャーメイン(Germain、C.B.)は、システム理論に生態学的な視点を導入して、「有機体」と「環境」との相互作用に焦点を合わせた。
5 アプテカー(Aptekar、H.H.)は、生態的システム論的視点を提唱し人と環境が相互に関連し合っている視点を重視した。
問題26
次の記述のうち、精神保健福祉士の行うマクロ領域のソーシャルワーク実践として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 退院後の地域生活定着を目指しサービスの調整やサービス利用を支援する。
2 地域に出向き、サービスに結び付いていない精神障害者を発見する。
3 居住支援を通じて明らかになった政策的課題の解決に向けた提言を行う。
4 就労を希望する精神障害者に面接を行い、願いや今後の課題を明らかにする。
5 精神科デイケアで、相互作用を活用しながら個人の成長や課題解決を図る。
問題27次の記述のうち、法に規定されている専門職の業務として、正しいものを1つ選びなさい。
1 社会復帰調整官は、医療観察制度による処遇決定を行う。
2 精神保健指定医は、措置入院の解除を判断するための診察を行う。
3 社会福祉主事は、生活保護の決定を行う。
4 精神保健福祉相談員は、精神障害者保健福祉手帳の交付に当たっての審査を行う。
5 介護福祉士は、介護保険の給付管理を行う。
問題28
N市にある精神科病院の相談室に勤務するA精神保健福祉十は、単身生活をしているBさんから、「もう病院には通え_ないよ。どうしよう」という相談を受けた。理由は、Bさんが通院に利用しているバス路線が廃止になることであった。病院デイケアのスタッフからも、バス路線廃止後のプログラム参加について、メンバーから不安が上がっていることを聞いた。また、外来患者以外にも、通学や買物に困る住民が多く、その対応を地域で話し合っているとのことだった。そこで、A精神保健福祉士は住民やメンバーと共に通院や日常生活に支障が出ることをN市に訴え、路線の存続を求めた。
次のうち、A精神保健福祉上が行った権利擁護の活動として、正しいものを2つ選びなさい。
1 クラスアドボカシー
2 ケースアドボカシー
3 シチズンアドボカシー
4 セルフアドボカシー
5 リーガルアドボカシー
問題29
病院で、新たに就労支援を目的としたデイケアを立ち上げることとなった。
C精神保健福祉士を主任とし、就労支援に関わる新たなスタッフが決まり、立ち上げのための会議を開いた。初めにそれぞれが情報共有を行い、次の段階では、ゴール設定とそれに伴う役割を確認レSSTを中心としたプログラムが開始された。しかし初回のプログラムが終了した際にD看護師から、「この就労支援のSSTでは、就労場面での練習より先に生活面の改善から始めた方がよい。練習課題の設定について会議を開いてほしい」と要望があった。これを受けて、C精神保健福祉士は会議を開催することとした。
次のうち、この時点のチームビルディングの段階として、適切なものを1つ選びなさい。
1 形成段階
2 対立段階
3 規範形成段階
4 実践段階
5 離脱段階
(精神保健福祉相談援助の基盤・事例問題1)
次の事例を読んで、問題30から問題32までについて答えなさい。
〔事例〕
E養護教諭は、Fさん(中学1年生、女性)から、入学当初より自傷行為についての相談を受けていだ。ある日Fさんから、「同級生たちからひどい言葉を浴びせられる。自分の性別のせいだ」と話をされた。性別への違和感の訴えは初めてで、これまでの相談の様子と異なることに気付いたE養護教諭は、性自認に課題がある人への支援経験が豊富な、スクールソーシャルワーカーのGさん(精神保健福祉士)に会ってみることをFさんに勧めた。Fさんの了解か得られたことから、E養護教諭はGさんに相談の予約をした。約束した日に、緊張した面持ちのFさんは、Gさんの下を訪れた。
自己紹介の後、世間話をして、Fさんの緊張も解けた頃、Gさんが語りかけた。(問題30)
Fさんは長い沈黙の後、「自分の性別に違和感があり、そのことをただ一人の親友に言ってみたが、それ以後、親友の態度がよそよそしくなってしまった]と話し始めだ。さらに「このままだと居場所がない」、「性別によって押しつけられた役割には納得がいかない」と続け、これからは男性として生活をしたいという願いを語った。
そして、「家族は気が付いていると思うが、きちんと話をしてみたい」と述べる一方で、
「学校では、一人ぼっちでつらい」と話した。肩を落とし涙ぐむFさんにGさんは、「親友にあなたのことを分かってもらい、今までどおり接してほしいのですね」と伝えた。(問題31)
後日、Gさんは。家族同伴面接を行い、自分の性別の違和感について理解してほしいというFさんの気持ちを家族に伝え、専門の医療機関の受診を勧めた。その後、性同一性障害(疑い)と診断を受け、カウンセリングが開始されることになった。
しばらくして、Fさんと家族から学級担任にFさんが自認する性で生活をしてみたいという申出があり、Gさんの協力の下、E養護教諭を中心に支援チームが作られ、修学を継続する環境調整が始まることになった。(問題32)
問題30
次の記述のうち、GさんがFさんに対して語りかけた言葉として、適切なものを2つ選びなさい。
1「友人関係で悩んできたと聞いています。よろしければ少しお話ししてくれますか」
2「白傷行為のことは聞いています。病院探しの手伝いをします」
3「一緒に問題を解決します。何でも困っていることを話してください」
4「相談の秘密は守ります。安心して話してください」
5「私にはできないこともあります。そのときは、他に相談できる人を探してみます。
問題31
次のうち、Gさんが用いた技法として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 開かれた質問
2 リフレーミング
3 自己開示
4 言い換え
5 感情の反映
問題32
次の記述のうち、この時点で支援チームが行うこととして、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 相談窓口をGさんに一本化する。
2 ホームルームでLGBTの学習会を行う。
3 Fさんの学校への具体的な要望について考える。
4 性別に違和感を持つ生徒がいないか調査する。
5 戸籍上の性別変更を行う方法について調べる。
(注)LGBTとは、(Lesbian、Gay、Bisexual、Transgender)の頭字語である。
〔事例〕
Hさん(22歳、精神保健福祉士)は大学を卒業し、4月から精神科病院に勤務している。就職後3か月間、各病棟での研修と各職種からの説明を受けることによって、病棟機能とその役割、各職種の業務を知り、病院組織についての理解が進んだ。その後、相談室主任であるJさん(42歳、精神保健福祉士)担当の病権に配属され、分からないことがあると尋ねることができ、少しずつではあるが業務が行えるようになってきた。(問題33)
半年が経過し、相談業務を自分なりにできると感じ始めていたHさんは、ある日、担当しているKさん(48歳、統合失調症)と退院後の生活について面接をした。しかしその面接でKさんを怒らせてしまい、そのことをJさかにに相談した。
Jさんからは.Kさんとの面接をどのように進めてきたか尋ねられた。HさんはKさんが失敗しないために、本人に適していると考えたサービスを利用するように説得しようとしたと話した。それを聞いたJさんは、Hさんが精神保健福祉士として専門的な動きができていないと感じ、スーパービジョンへの参加を提案した。Hさんがスーパービジョンに参加すると、固定的なスーパーバイザーを置かず、数名の精神保健福祉士がスーパーバイザーとスーパーバイジーの両方の役割を行いながら、精神保健福祉士が持つべき支援の視点や、精神保健福祉士としての価値について意見を出し合い検討されていた。(問題34)
スーパービジョンの参加者が、職能団体主催の様々な研修を受講していることを知ったHさんは、それまで積極的にはなれなかった研修会への参加を考えるようになった。実際に参加してみると、様々な領域で働く精神保健福祉士の話を聞くことができ、新たな知見も広がった。その後も、開催される研修会に積極的に参加したHさんは、ある日、Kさんとの面接が終がった帰り際に、「しかり話を聞いてもらえてよかった」と声を掛けられた。その言葉を聞き、研修に参加し、学び続けることの重要性を改めて認識した。(問題35)
(精神保健福祉相談援助の基盤・事例問題2)
次の事例を読んで、問題33から問題35までについて答えなさい。
問題33
次のうち、Hさんの成長を促したものを表す用語(略語)として、正しいものを1つ選びなさい。
1 IPE
2 CBT
3 IMR
4 FPE
5 OJT
問題34
次のうち、Hさんが参加したスーパービジョンとして、正しいものを1つ選びなさい。
1 ピアスーパービジョン
2 ライブスーパービジョン
3 個人スーパービジョン
4 グループスーパービジョン
5 セルフスーパービジョン
問題35
次のうち、この時、Hさんが改めて認識した国際ソーシャルワーカー連盟IFSW)の倫理綱領に規定されているソーシャルワーカーの責務として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 調査・研究
2 専門性の向上
3 教育・訓練・管理
4 社会的信用の保持
5 専門職の擁護