第30回介護福祉士試験問題 解答解説87-96 障害の理解

第30回介護福祉士国家試験問題解答解説

障害の理解

障害の理解

続きまして、今年もやはり、難問ぞろいだった、『障害の理解』を、御一緒に振り返ってまいりましょう。

過去の本試験においては、視覚障害、聴覚障害、内部障害、肢体不自由、精神障害、知的

障害、発達障害の分野で、多くの出題がみられました。

それぞれの障害に関する、医学的知識も求められるとともに、障害の受容に関する問題も多く

出題されてきていることも、御注目いただきたいポイントです。

また、介護福祉士本試験のトレンドの1つが、

各種職業間における、【協働と、連携】 と、かんがえられます。

学習をすすめるうえでは、旧カリキュラムの、『形態別介護技術』、『老人・障害者の心理』

『障害者福祉論』などに該当する過去問題から、ヒントを得られますので、31回 合格を

目指す受験生さんは、ぜひ、じっくりチェックなさってみてくださいね。

 

 

問題87
ICF(International Classification of Functioning、Disability and Health:国際生活機能分類)の社会モデルに関する記述として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 障害は、個人の問題である。
2 障害は、病気・外傷などから直接的に生じる。
3 障害は、専門職による個別的な治療で解決する。
4 障害は、環境によって作り出されるものである。
5 障害への対処では、個人のよりよい適応と行動変容が目標とされる。

 

 

 

 

解答問題87

正解は、4 といたします

これまでは人間の障害や生活機能を考える際に、『医学モデル』と『社会モデル』という

考え方が主流でした。

『医学モデル』では、病気やけがなどが直接障害を引き起こすものとして理解されるため

、障害への対応には医療が必要不可欠なものとされています。

一方で『社会モデル』では、障害が周囲の環境によって作り上げられるものとされている

ため、社会の環境を変えることが障害をなくすことにつながるとの考え方がされています。

ICFの考え方は、これまでの『医学モデル』と『社会モデル』を統合するものという

ことができます。

つまり、障害を個人と周囲の環境双方からとらえ、人間の状況を全体的に理解することを

目指しているのが、ICFなのですね。

 

 

 

 

問題88
障害福祉計画において、ノーマライゼーション(normalization)の理念に沿って設定されている成果目標として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 利用する交通機関の整備
2 ADL(Activities of Daily Living:日常生活動作)の自立
3 身体機能の回復による社会復帰
4 疾病や障害の管理
5 福祉施設の入所者の地域生活への移行

 

 

 

 

 

 

解答問題88

正解は、5 といたします

『ノーマライゼーション』とは、

1950年代、バンク・ミケルセン(デンマーク)らが関わっていた、知的障害者の家族会の

施設改善運動から生まれた理念ですね。

障害を持っていても地域社会で普通の暮らしを実現する脱施設化など、社会環境の変革に

おおきく、寄与しました。

国連の国際障害者年(81年)を契機に認知度を高め、現代の社会福祉の基本理念となって

います。

ノーマルとは、ふつであること、標準的であること、正常であること・・・

などの意味をもちます。

高齢者や障害者などを施設に隔離せず、健常者と一緒に助け合いながら暮らしていくのが

正常な社会のあり方であるとする考え方。また、それに基づく社会福祉政策などを

ここでは、思い出していただければ、GOODですね。

皆さまが目指す『介護福祉士』は、実に多くのかたを対象とする、超プロフェッショナルな

資格です。

膨大な試験範囲のため、本試験に向けての学習も、大変だったこととおもいます。

あらためまして、本当に、本当に、御疲れ様でした。

さて。

後半の難関関所ともいえる、障害の理解ですが、意外にも? 問題の文章にヒントが隠れて

いるものが多いので、1つ、1つ、丁寧に問題文を読み込むことが、必勝法かとおもわれます。

 

 

 

問題89
「ソーシャルインクルーション(social inclusion)」を説明する内容として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 本人の利益のために、本人に代わって意思決定をすること
2 全人間的復権のこと
3 共に生き、支え合うこと
4 障害者の「強さ」に着目して支援すること
5 権利擁護や代弁をする活動のこと

 

 

 

 

解答問題89

正解は、3 といたします

インクルージョンとは、『社会的包容力』、『社会的包摂』などと訳されます。

障害者らを社会から隔離排除するのではなく、社会の中で共に助け合って生きていこう

という考え方をいうのですね。

 

 

問題90
高次脳機能障害(higher brain dysfunction)の主な症状の1つである社会的行動障害に関する次の記述のうち、適切なものを1つ選びなさい。

1 自分で計画を立てて物事を実行することができない。
2 2つのことを同時にしようとして混乱する。
3 新しいことを覚えられなくて何度も人に聞く。
4 ちょっとしたことで感情を爆発させる。
5 人に指示をしてもらわないと動けない。

 

 

 

解答問題90

正解は、4 といたします

ここは、思いちがいしてたかも・・・という、受験生さんも、多かったのでは

ないでしょうか??

だれにでも、起こり得る、高次脳機能障害。

『社会的行動障害』として、以下があげられています。

◆◆ 意欲・発動性の低下

意欲・発動性の低下:自発的な活動が乏しく、運動障害がないのに一日中ベッドから

離れないなどの無為な生活を送ります。

◆◆ 情動コントロールの障害

最初のいらいらした気分が徐々に過剰な感情的反応や攻撃的行動にエスカレートし、

一度始まると、コントロールすることが困難です。

自己の障害を認めず訓練を拒否します。突然興奮して大声で怒鳴り散らしたり、看護者に

対する暴力や、性的行為などの反社会的な行動が見られます。

◆◆  対人関係の障害

社会的スキルは、認知能力と言語能力の下位機能と考えることができます。

高次脳機能障害でみられる社会的スキルの低下には、急な話題転換、過度に親密で

脱抑制的な発言および接近行動、相手の発言の復唱、文字面に従った思考、皮肉・諷刺

抽象的な指示対象の認知が困難、さまざまな話題を生み出すことの困難などが含まれます。

面接により社会的交流の頻度、質、成果について評価します。

◆◆  依存的行動

脳損傷後に人格機能が低下し、退行を示します。この場合には発動性の低下を同時に

呈していることが多く、結果として依存的な生活を送ります。

◆◆  固執

遂行機能障害(新しく生じた問題を解決することの困難)がある場合、認知あるいは

行動の転換の障害が生じ、従前の行動が再び出現(保続)し、その方法に固着します。

『社会的行動障害は』、さまざまな原因で起こるとされています。

① 脳機能の損傷のため、自分で自分の行動を十分に制御できなくなる場合

② 注意障害、記憶障害、遂行機能障害などのために、状況をうまく判断できず

 結果的に不適切な言動となる場合

③ 失敗経験を積むことで自信を喪失し、心理的な負担が増えた結果、怒りや抑うつ的な

  症状が出現する場合などがあります。

また、情報処理がうまくいかず不適切な言動をしてしまう → その結果パニックになり

追い詰められて精神的な負担が増え、問題行動が増える → 失敗が続いて自信を喪失し、

抑うつ的になってしまう・・・

といった、悪循環を抱えている場合もありえます。

 

問題91
自閉症(autism)の特性に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 対人関係の形成に障害がある。
2 読む、書く、計算することが苦手である。
3 知的機能の発達に遅れがみられる。
4 集中力がない。
5 思考の流れに関連性や統一性がない。

 

 

 

 

解答問題91

正解は、1 といたします

『自閉症』は先天的な発達障害の一つで、『社会性と対人関係の障害』『コミュニケーション

や言葉の発達の遅れ』、『行動や興味の偏り』の3つの特徴が、発達段階で現れるとされます。

自閉症にはさまざまな症状がありますが、その症状には個人差があります。

早期に特性に気づき、一人ひとりに合った環境をつくること、早期療育や適切な教育を行って

いくこと、苦手なことの対応方法を工夫していくことで、逆に特性を強みとして活かすことも

できるのですね。

ここで、試験出題基準における、『障害の理解』の 中項目、小項目をおさらいです。

やっぱり出るんだな・・・とおもえる、専門用語がずらり並んでいますので、31回合格を

目指す皆さまは、はやめに御確認を。

◆◆印は、中項目を、 ◇◇印は、小項目をしめします。

◆◆  障害の概念

◇◇  障害の捉え方、ICIDH(国際障害分類)からICF(国際生活機能分類)への変遷、

    その他

◆◆  障害者福祉の基本理念

◇◇  ノーマライゼーション、リハビリテーション、国際障害者年の理念、その他

◆◆  身体障害

◇◇  視覚障害の種類と原因と特性

◇◇  聴覚障害、言語機能障害の種類と原因と特性

◇◇  肢体不自由の種類と原因と特性

◇◇  内部障害の種類と原因と特性

◆◆  精神障害

◇◇  精神障害の種類と原因と特性 

◇◇  高次脳機能障害の種類と原因と特性

◆◆  知的障害

◇◇  知的障害の種類と原因と特性

◆◆  発達障害 

◇◇  発達障害の種類と原因と特性 

◆◆  難病

◇◇  難病の種類と原因と特性 

◆◆  障害のある人の心理

◇◇  障害が及ぼす心理的影響

◇◇  障害の受容

◇◇  適応と適応機制、その他

◆◆  障害に伴う機能の変化と日常生活への影響

◇◇  障害のある人の特性を踏まえたアセスメント(保たれている能力と低下している能力の
    把握、家族との関係の把握) 

◆◆  地域におけるサポート体制

◇◇  行政・関係機関との連携

◇◇  障害者総合支援法における協議会との連携

◇◇  その他

◆◆  チームアプローチ

◇◇  他の福祉職種との連携

◇◇  保健医療職種との連携

◇◇  その他

◆◆  家族への支援

◇◇  家族の障害の受容の過程での援助

◇◇  家族の介護力の評価

◇◇  家族のレスパイト

◇◇  その他

 

 

問題92
G君(12歳、男性)・は現在、小学校に通学している。小さい頃から、集中力が乏しい、じっとしていられない、順番が待てないなどの症状が指摘されていた。また、このような行動に対して友人や周囲の大人から注意を受けることが多く、自信が持てないでいた。心配した母親は、紹介を受けて発達障害者支援センターに相談することにした。
G君に対する支援方法の助言として、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 一度に多くの指示を伝える。
2 他者との交流を回避する。
3 集中できる環境をつくる。
4 比喩を用いた会話を促す。
5 視覚に強い刺激を与える。

 

 

 

 

 

解答問題92

正解は、 3 といたします

いまでは、多くの有名人のかたが、御自身の『発達障害』をカミングアウトなさる

時代となりました。

けれど、まだまだ、当事者や御家族にとっては、生きづらいことが多々あると

おもわれます。

1人、また、1人。

正しい知識をもつかたが増え、新しい関係が築けるとうれしいですね。

 

 

 

 

問題93
言語機能障害を来す難病として、最も可能性の高いものを1つ選びなさい。

1 潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis)
2 悪性関節リウマチ(malignant rheumatoid arthritis)
3 後縦靱帯骨化症(ossification of posterior longitudinal ligament)
4 クローン病(Crohn disease)
5 脊髄小脳変性症(spinocerebellar degeneration)

 

 

 

 

 

 

 

解答問題93

正解は、5 といたします

ほとんどの受験生さんが、ギブアップしそうな、スーパー難問でした。

脊髄小脳変性症の症状として、運動失調は思い出せても、言語機能障害は・・・

ですよね。

『小脳』とは、『前頭葉』『側頭葉』などと並ぶ、脳の一部であり、側頭葉の下、脳幹の

横に位置しています。

小脳は、役割に応じて大まかに分けて『大脳小脳』『脊髄小脳』『前庭小脳』の3つに、分けられ

ます。

『大脳小脳』は、四肢の運動の調節や、言語を『脊髄小脳』は、体幹の運動の調節を『前庭小脳』

では、平衡感覚や眼球運動の調節を行います。

【小脳性構音障害】では、

発声に必要な筋肉を動かしにくくなるため、酔っぱらったような、とぎれとぎれで不明瞭な

会話となります。

また、ゆっくりとした話し方になったり、突然大きな声になる爆発性言語がみられることも

あります。

 

 

 

 

 

問題94
適応機制の1つである「退行」に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1 認めたくない欲求を心の中に抑え込もうとする。
2 欲求を価値の高い行為に置き換える。
3 適当な理由をつけて、自分を正当化しようとする。
4 発達の未熟な段階に後戻りして、自分を守ろうとする。
5 苦しくつらい現実から逃げることで、一時的に心の安定を求める。

 

 

 

 

解答問題94

正解は、4 といたします

きました。

てきおうきせいです。

しっかりとくてん。

されましたか。

葛藤や欲求不満、不安、ストレスなどの感情的に嫌なことを減らしたり避けたりするために

心の中で無意識に働く、こころの安全装置を、適応規制、または、防衛機制とよびます。

【退行】という、漢字からも、読み取れるように、

ある時点において、それまでに発達した状態や機能あるいは体制が、それ以前のもっと

低次の状態や、機能、ないし体制にまで逆戻りすることをいいます。

 

 

 

 

 

問題95
相談支援専門員の業務として、適切なものを1つ選びなさい。

1 障害支援区分の審査判定を行う。
2 就労に必要な能力を高める訓練を行う。
3 サービス等利用計画を作成する。
4 個別支援計画を作成する。
5 外出時の移動介護を行う。

 

 

 

 

解答問題95

正解は、 3 といたします

いったい。

なにの。

おはなしでしょうか。

なんて、受験生さん、おられませんか??

ここでの話題は、『障害者総合支援法』に基く、サービス利用について。

そうですね。

相談支援専門員さんの、立ち位置や、業務内容などの理解を問うています。

しょうがいをもつかたが、福祉サービス利用を望まれる場合、まず、原則として、

『障害支援区分』の認定をうけ、指定特定相談支援事業者が作成した、サービス等

利用計画案を提出します。

この、計画案を作成するのが、相談支援専門員なのですね。

ちょっぴり、介護支援専門員(ケアマネージャー)と似たひびきなので、とまどった

受験生さんも、おいでかもしれないですね。

申請方法から、認定、サービス利用までの、いちれんの流れは、ぜひとも理解して

おきたいところとなります。

御住いの市町村のパンフレットなども、ぜひ、ご覧になってみてくださいね。

 

 

 

問題96
Hさん(女性)は、長男J君(3歳)が通園中の保育所の保育士から、「J君は言語などの発達に遅れがあるようだ」と伝えられた。子ども’の将来に不安を感じたHさんは、知り合いの介護福祉職に相談した。
介護福祉職がHさんに対して行うアドバイスとして、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 子どもの発達の状態を見守る。
2 児童発達支援センターに相談する。
3 児童相談所の判定を受ける。
4 障害児保育の申請を行う。
5 居宅介護事業所を紹介する。

 

 

 

解答問題96

正解は、 2 といたします

保育士さん、グッジョブ!!

★★ ことばが出ない、ことばが増えない
 

★★ 名前を呼んでも振り向かない

★★ 落ち着きがなく、集中して遊べない

★★ 友だちとうまく遊べない

★★ 運動面の発達が心配

★★ 抱っこしづらい

★★ ひとり歩きが遅い

★★ 視線が合いにくい

★★ 言葉が遅い

★★ 会話がかみ合わない

★★ 落ち着きがない

保育士さんが気づいたり、親御さんが、かんじたり・・・

お子さんの発達について、気になること、心配なことがあっても、不思議では

ありません。

『児童発達相談支援センター』には、多くの相談が、寄せられるのですね。

『児童発達相談支援センター』とは、

地域の障害のある児童を通所させて、日常生活における基本的動作の指導、自活に必要な

知識や技能の付与または集団生活への適応のための訓練を行う施設です。

福祉サービスを行う「福祉型」と、福祉サービスに併せて治療を行う「医療型」が

あります。

障害児に対する通所施設は、以前は障害種別ごとに分かれていましたが、複数の障害に

対応できるよう、平成24年度より一元化が行われました。ただし、これまで同様に障害の

特性に応じたサービス提供も認められています。

相談だけでも、だいじょうぶとされます。

おおいに、活用させていただきたい、社会資源といえるでしょう。

 

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